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ベトナム
(公開日:2014.03.26)

少数民族の子どもとお母さんのための栄養改善事業(2014.03.26)

 

皆様のご寄附と外務省の助成を受けて実施した「最貧困層のための地場の食料確保と栄養改善事業」の第1期が2014年3月18日をもって完了し、19日より続いて第2期を開始しました。

今回は、山岳少数民族のお母さんと子どものための栄養改善を目指す本事業について説明したいと思います。

■ベトナムで広がる格差
経済発展目覚ましいベトナム。ハノイやホーチミンのような大都市には次々に新しいビルが建設され、ショッピングセンターにはブランド品が並んでいます。その一方で、都市部と農村部、主要民族と少数民族の間では経済的、社会的な格差が拡大しています。世界銀行の発表によると2010年の貧困率は、都市部では6%であるのに対して農村部では27%となっており、4倍以上の差となっています。また、農村部の中での地域差も大きく、北西山岳部では約60%、北東山岳部では約38%となっています。この北部山岳地帯は、少数民族の人々が多く暮らす地域です。ベトナムの総人口の約15%に過ぎなない少数民族が、ベトナムの貧困層の半分以上を占めているのが現状です。


(左)ビルが立ち並ぶホーチミン市  (右)イェンバイ省の田園風景

■山岳地方に暮らす少数民族
本事業の対象地であるイェンバイ省バンチャン郡は、国内でも最も貧しい地域のひとつである北西山岳部に位置しています。イェンバイ省の人口の約半分は少数民族が占め、バンチャン郡においては、タイ族やザオ族、モン族の人々が、それぞれの文化や風習、言語を大切にしながら暮らしています。

 
(左)タイ族が暮らす伝統的な高床式住居
(右)お団子にまとめた髪と黒のロングスカートが特徴的なタイ族の女性たち

 
(左)ザオ族の女性達。手作りの民族衣装を仕上げるのには一年を要します。
(右)ザオ族の子ども達。女の子は10歳頃から裁縫を習います。

都市では生活水準があがり、どんどん便利になっている一方で、開発に取り残された少数民族の人々の生活はむしろ、より厳しくなっています。こうした経済状況は、子どもの栄養状態にも影響しており、慢性的な栄養不良によって引き起こされる成長阻害(栄養不足により、脳や身体が適切に成長しない状態)の状態にある子ども達は、多数派の民族であるキン族では23.2%であるのに対して、本事業の対象であるタイ族では40.6%、ザオ族では46.2%に達しています。

成長阻害は、長期間にわたって子ども達に影響をあたえます。セーブ・ザ・チルドレンが昨年行った調査によると、成長阻害にある子ども達はIQが低くなったり、そうでない子ども達に比べて、成人後の収入が20%少なくなるというデータも出ております。成長阻害を防ぐためには、お母さんが妊娠してから赤ちゃんが2歳になるまでの約1,000日間に、適切な微量栄養素* を摂取することが重要だと言われています。
  *ミネラル、ビタミンなど、微量ではあるが体の機能を適切に働かせるために欠かせない栄養



■子ども達がその可能性を十分に発揮し、健やかに育つために。
上記のような子どもの栄養問題の背景には、?保健や栄養に関する知識の不足、?食料の不足、?現金収入の不足、等の問題があります。本事業では、それぞれの原因に対し、下記のような活動を行い、第1-3期の3年間をかけて、約2,000人の子ども達と妊産婦の栄養改善に取り組んでいます。

?保健や栄養に関する知識・技術の向上
子どもの発育阻害を防ぐには微量栄養素の摂取が重要であるものの、お母さん自身の知識が不足しています。妊産婦検診を受けるお母さんも20%ほどしかいません。また、村の診療所スタッフの母子保健や栄養に関する知識や技術も十分とは言えません。
  →お母さん達や家族、また村の診療所のスタッフ達に、完全母乳育児や栄養食についての研修を行い、知識や技術の普及を目指しています。月に1回、2歳未満の子ども達の身体測定を行い、栄養不良が見られる子どものお母さん達には栄養回復センターにて集中的な研修も行っています。村の診療所においても月に一回“妊産婦の日”を設定し、お母さん達が学んだり、情報交換したりする場を提供しています。

 
(左)栄養研修では、家でも実践できるように調理実習も行います。
(右)身体測定で子どもの成長を確認します。

?世帯や村における食料の質と量の向上
たとえ母親達が栄養に関する知識を身につけても、家に食料がなければ、その知識を十分に実践することは困難です。事業対象地域の多くの村においては、年に2回、計2〜4ヶ月間、食料が不足する期間があります。また、栄養改善のためには、多様な栄養素を摂取することが必要ですが、毎月4種類以上の野菜を栽培し、食している家庭は2割にも達しません。
  →農薬や殺虫剤を投入せずに米の生産量を向上させるSRIという農法を実践することで、米の増産を目指しています。また、有機農業の活用による栄養菜園を家庭に設置し、環境にもやさしく、多様で栄養価の高い野菜や果物を一年中家庭で育てられるように取り組んでいます。元々少数民族の人達が伝統的に食してきた森の昆虫や野草、川のエビや魚などの自然資源には微量栄養素が多く含まれており、食料の不足する時期に利用することが可能です。そこで、これらの自然資源の栄養調査を進めるとともに、貴重な栄養源としての活用を推進しています。同時に、その自然を守っていくための環境教育も行っています。

 
(左)ハーブを使った殺虫剤や有機肥料を活用するための有機農業研修。
(右)森は貴重な食料庫。ザオ族の女性は、森の植物や薬草の知識がとても豊富です。

?現金収入の向上
食料が不足する時期には、村人たちは借金をして食料を購入せざるを得ません。また、近年急速に普及してきている農薬や殺虫剤を購入することは、農民の借金の主要な要因となっています。自家消費用の米ですら十分に生産出来ていない農家には現金収入はほとんどなく、担保もない村人は収穫予定の米を担保にお金を借ります。ただでさえ生産量の少ない米を手放すことで食料不足に陥り、借金を重ねる・・・という悪循環に陥っているケースが良く見られています。
  →高金利の金貸しではなく、ベトナム政府が運営している、より安定した低金利の金融サービスを村人たちが利用できるよう、銀行と村人の双方に研修を行い、適切に活用できるように働きかけを行っています。また、現金収入を向上させることを目的として、家畜の飼育や食物の栽培などを推進し、世帯の安定した生計のサポートに取り組んでいます。


烏骨鶏の飼育の様子。貴重な栄養源にも、収入源にもなります。

上記のよう、問題はそれぞれつながっており、包括的な取り組みが必要です。
そこでSCJは、
?(保健や栄養に関する知識・技術の向上)により、栄養に関する知識を身につけ、
?(食料確保)により入手する食料によって、身につけた知識の実践を強化し、
?(現金収入の向上)で得た収入によってさらに多様な食料を入手し、栄養改善に貢献できるよう、
支援を行っています。

これらによって悪循環を断ち切り、お母さんと子ども達が元気になるような、そして、子ども達がそれぞれもつ可能性を伸ばして成長していけるような環境づくりを、コミュニティや行政と協力して進めています。

今後は、上記のそれぞれの活動について、現場の声を届けていきたいと思います。

※本事業は、外務省からの助成金の他、個人の皆様からのご寄付および下記の企業様(2014年3月時点)からのご支援によって実施しております。この場を借りて改めてお礼申し上げます。
株式会社味の素「『食と健康』国際協力支援プログラム」
株式会社 魚国総本社
株式会社ディーンアンドデルーカジャパン
イオン株式会社

(ベトナム担当:武田)


 

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