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日本/子ども虐待の予防
(公開日:2018.02.08)

東京 「シンポジウム 子どもに対する体罰等の禁止に向けて 子どもをたたかない、怒鳴らない社会を目指して」を開催

 

20171028日、セーブ・ザ・チルドレンは、東京都千代田区にて、シンポジウム「子どもに対する体罰等の禁止に向けて」を開催しました。



子どもをたたいたり、怒鳴ったりといった体罰等や虐待が、子どもの健やかな発達にさまざまな影響を与えることが科学的に明らかになってきました。しかし、セーブ・ザ・チルドレンが20177月に、日本に住む2万人の大人を対象に行った意識・実態調査では、6割近い大人が「しつけ」のための体罰等を容認していることが分かりました。そこで今回のシンポジウムでは、福井大学の友田明美氏、弁護士で国連子どもの権利委員会委員の大谷美紀子氏、日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事の森保道氏、セーブ・ザ・チルドレン国内事業部プログラム・マネージャー瀬角南が登壇し、体罰等が子どもに与える影響や日本の法整備の現状についてそれぞれの立場から課題や今後の展望を話しました。

 

当日は、子育て中の保護者や、地方自治体の議員、弁護士、教員、子ども・子育て支援に携わる行政職員など168人が参加しました。

 


◆報告「たたかない、怒鳴らない子育てを推進するセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの取り組み」

はじめに、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの瀬角より、子どもに対する体罰等に関する状況と、セーブ・ザ・チルドレンが国内で行っている取り組みを紹介しました。セーブ・ザ・チルドレンが20177月に実施した調査結果では、日本に住む大人2万人のうち60%が「しつけのために子どもをたたくこと」を容認すると回答したことなどを発表。

 

しかし体罰等は子どもの尊厳を傷つけ、「子どもの権利条約」で定められている、生きる、育つ、守られる、参加する権利のすべてを侵害する行為であることを伝えました。また、体罰等がなくならない理由について、法律で全面禁止されていないこと、「軽ければ問題ない」「痛みを伴わないと子どもは分からない」といった人々の意識の問題、そして体罰等を使わずに子どもに教える方法が分からないこと、があるのでないかと指摘しました。そして、体罰等を使わずにしつけをしながら子どもの育ちを支える考え方として、セーブ・ザ・チルドレンが普及している「ポジティブ・ディシプリン(前向きなしつけ)」を紹介しました。

 

 


◆基調講演「体罰や暴言等が子どもの脳の発達に与える影響」

続いて、友田明美氏が科学的な研究と医学の立場からの基調講演を行いました。虐待やネグレクトなどに限らず、子どもの健康や育ち、生存権や発達に悪影響を及ぼすものすべてをマルトリートメント(不適切な養育)といい、これには体罰等や言葉の暴力、両親の激しい喧嘩を目撃することなども含まれます。

 

友田氏は、マルトリートメントを受けることで、早い時期からうつ病や精神疾患、アルコール・薬物依存などのさまざまなこころの病気や自殺のリスクが高くなるだけでなく、心臓疾患や肺がんの発症、そして寿命が20年縮むという結果も明らかになっていると指摘。さらに、近年増えているとされる発達障害に似た症状も、実は養育環境が影響している愛着障害の場合もあること、脳の発達が変わることによりこうした病気が発症すること、また激しい体罰は脳の前頭前野の委縮や、その奥にある扁桃体という感情をコントロールする部分も変形させてしまうため、さまざまな影響が出ることを説明しました。

 

例えば、「お前なんか生まれてこなければよかった」などといった言葉の暴力は、聴覚的な感覚処理やコミュニケーションに大事な部分である聴覚野を変形させてしまうといいます。一方で友田氏は、人間は回復する力を持っており、「癒されない傷は治る傷である」と語りました。専門的な心理治療などを通して、愛着の再形成は十分可能であること、また子どもの気持ちを聴くことや安心して生活できる場を周囲の大人がつくることで、子どもはどんどん成長していくと伝え、子どものためには親を支援することが大切だと強調しました。

 

 


◆子どもに対する暴力をなくすことは、私たちの課題―講演「子どもに対する暴力根絶の国際的な潮流」

大谷美紀子氏は、国際的な視点から子どもに対する体罰等をなくすための取り組みを紹介しました。国連では、子どもへの暴力を人権問題として扱っており、暴力をなくすために、各国の法律で暴力を禁止する取り組みを進めています。この中に体罰等の禁止も含まれます。

 

大谷氏は、世界中で子どもに対する暴力が十分に扱われていないのは、子どもが声を上げにくいからであると指摘。自分が人権侵害を受けている、守られる権利があることを知らず、特に家庭の中で起きる体罰は、親が愛情のためにしてくれるからと考え、通報も相談もしません。学校でも同じようなことが起きる可能性があります。子どもに対する暴力は、私たち大人が取り組んでいくべき課題であると強調しました。

 

子どもに対する暴力は、子どもの権利を奪うだけでなく、将来的に家庭や親密な人間関係を築く力、収入を得る力にも関係し、貧困問題にもつながります。2015年に国連が定めた、持続可能な開発目標(SDGs)のひとつの大きな目標として、子どもに対する暴力をなくすことが掲げられ、世界中でこの目標達成のための取組みが進められていると伝えました。

 

 


◆法改正と啓発の連動が必要−「体罰等禁止法制化の必要性」

森保道氏は、体罰等を法律で禁止したとそうでない国とでは、体罰に関する意識や使用に明らかな差があること、着実に体罰や虐待が減少していることを具体的な数字を挙げて紹介しました。例えば、フィンランドでは、体罰の減少と殺害される子どもの数の減少の関連性が指摘され、またスウェーデンでは家庭から切り離されて保護された子どもの割合も約3分の1減少したこと、そして体罰容認率が低い国では不適切養育による子どもの死亡率が低いといったデータがあります※1

 

そして、体罰等の法的禁止及び啓発は、比較的費用がかからず大きな効果の得られる施策であり、法改正と啓発の両方を行うことが最も効果が高いと指摘されていると話しました。体罰等を法律で禁止する国は着実に増え、現在53ヶ国に達しています。日本でも、厚生労働省より「愛の鞭ゼロ作戦」というパンフレットが発行されていますが、体罰等をなくすために大きな効果を上げるには、啓発と同時に法改正をすることが非常に重要であること、法的禁止と啓発は、予防を目的とした広く一般への啓発と支援を強化するポピュレーションアプローチ(集団全体に働きかけることにより、集団全体のリスクを少しずつ軽減させ、よい方向にシフトさせること)の施策であることを強調しました※2

 


 

◆パネルディスカッション

最後に、会場から寄せられた質問に答える形で、登壇者全員によるパネルディスカッションを行いました。「なぜ子どもに対する体罰等の禁止の法制化が必要なのか?」という質問に対して、「これまで容認されてきたからこそ、法律で禁止する必要があり、親支援や啓発にもつながる。」「『法は家庭に入らず』という格言があるが、虐待や暴力を防止して人権を守るためには法が家庭に入る必要がある。児童虐待防止法、DV防止法、高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法がそうした法律である。根強く残っている子どもに対する体罰を容認する社会通念や慣習は、法律で禁止しなければ変革は難しい」などの回答がありました。

 

また、「禁止するとしつけや教育ができなくなるのでは?」という懸念について、「体罰でしつけはできない。一生懸命でよかれと思ってやっている親も、意識改革をすれば変わっていく。親を責めるのではなく、養育者支援が大事」「実際に体罰等を用いない子育てを一緒に考えていくと、変わっていく。例えばポジティブ・ディシプリンプログラムを受講後、体罰を減らすことに役立つと答えた方は多い。体罰はいけないと、きちんと理解していくことが大事」との回答もありました。

セーブ・ザ・チルドレンは、今後も皆さまとともに、子どもをたたかない、怒鳴らない社会の実現に向けて活動を続けていきます。

※本シンポジウムの報告書はこちらから

(国内事業部)

 

1 参考:日本弁護士連合会パンフレット「子どもがすこやかに育つ、虐待のない社会を実現するために」3頁Q6「体罰等を法律で禁止するとどのような効果が期待できるの?」

2 参考:NPO法人こどもすこやかサポートネットホームページ「体罰の法的全面禁止、よくある質問への回答」



 

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