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日本/子どもの貧困問題解決
(公開日:2019.05.31)

第4回・第5回国連子どもの権利委員会 日本報告審査総括所見から見る子どもの貧困

 

今年(2019年)は日本が子どもの権利条約を批准して25年の節目の年です。1月16日・17日には、スイス・ジュネーブで、日本政府の第4回・第5回定期報告に関する子どもの権利委員会の審査が行われました。
子どもの権利条約を批准した国は、定期的にその国の実施状況を報告し、子どもの権利委員会がその報告について審査することになっています。その審査を踏まえて、2月7日には、同委員会が総括所見(英語※1日本語訳※2)を提出しました。



日本の子どもの相対的貧困率は、13.9%※3。7人に1人の子どもが相対的貧困下にあるといわれています。日本の子どもを取り巻く課題はさまざまありますが、子どもの貧困問題は解決が急がれる重要な課題の一つであり、セーブ・ザ・チルドレンは日本国内の子どもの貧困問題を解決するための活動を、2010年から行ってきました。


2010年に行われた第3回審査の総括所見には、日本における子どもの貧困問題解決に向け、踏み込んだ勧告がなされました。前回の審査から9年を経た今回の第4回・第5回審査の総括所見では、子どもの貧困問題に関して、どのような言及がなされたのでしょうか。


■政策の推進を歓迎しながらも、子どもの貧困問題解決に向けた対策の促進を勧告
委員会は、総括所見において「子供の貧困対策に関する大綱(2014年)など、前回の審査以降に子どもの権利に関連してとられた制度上および政策上の措置も歓迎する。」としながら、以下のような勧告をしました※4


・資源配分について
パラグラフ10.子どもの相対的貧困率がこの数年高いままであることに鑑み、かつ子どもの権利実現のための公共予算編成についての一般的意見19号(2016年)を想起しながら、委員会は、締約国が、子どもの権利の視点を含み、子どもに対する明確な配分額を定め、かつ条約の実施のために割り当てられる資源配分の十分性、有効性および公平性の監視および評価を行なうための具体的指標および追跡システムを包含した予算策定手続を確立するよう、強く勧告する。そのための手段には以下のものが含まれる。
(a) 子どもに直接影響を与えるすべての支出の計画、確定、補正および実際の額について、詳細な予算科目および予算項目を定めること。
(b) 子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析を可能にする予算分類システムを活用すること。
(c) サービス提供のための予算配分額の変動または削減によって、子どもの権利の享受に関する現在の水準が低下しないことを確保すること。
(d) 子供・若者育成支援推進大綱の実施のために十分な資源を配分すること。


・データ収集に関して
パラグラフ11.締約国によるデータ収集の取り組みには留意しながらも、委員会はまた、いまなお欠落が存在することに留意する。条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起しながら、委員会は、締約国が、条約のすべての分野(とくに子どもの貧困、子どもに対する暴力ならびに乳幼児期のケアおよび発達の分野)で、するよう、勧告する。データが年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景別に細分化されたデータ収集システムを改善するとともに、当該データを政策立案およびプログラム策定のために活用するよう、勧告する。


・家庭環境に関して
パラグラフ27.委員会は、締約国が、以下のことを目的として、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられたあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
(a) 仕事と家庭生活との適切なバランスを促進すること等の手段によって家族の支援および強化を図るとともに、とくに子どもの遺棄および施設措置を防止する目的で、困窮している家族に対して十分な社会的援助、心理社会的支援および指導を提供すること。


・生活水準に関して
パラグラフ38.社会的移転および児童扶養手当のようなさまざまな措置には留意しながらも、委員会は、持続可能な開発目標のターゲット1.3に対する注意を喚起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 家族給付および子ども手当の制度を強化する等の手段により、親に対して適切な社会的援助を与えるための努力を強化すること。
(b) 子どもの貧困および社会的排除を低減させるための戦略および措置を強化する目的で、家族および子どもとの的を絞った協議を実施すること。
(c) 子供の貧困対策に関する大綱(2014年)を実施するために必要なあらゆる措置をとること。



子どもの貧困対策を進めていくうえで、データ把握、実効性を伴った予算措置、子どもとともに家庭への支援が重要であること、家族や家庭との協議が必要であることなど、具体的な勧告がなされました。特に資源配分に関しては、強く勧告する姿勢が見られます。

その他にも、「休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動」において子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動の必要性(パラグラフ41)や、「子どもの意見の尊重」において、子どもに関わる司法手続および行政手続ならびに地域コミュニティーなどにおいて、すべての子どもが意味のある形でかつエンパワーされながら参加することを積極的に促進すること(パラグラフ22)など、子どもの貧困問題解決に関連する諸項目への勧告もなされました。


■子どもの権利委員会からの勧告を受け、日本国内での子どもの貧困問題を解決するために
日本政府には条約の締約国として、勧告の内容を誠実に検討し、取り組んでいくことが求められます。前回の勧告以降、子どもの貧困に関する法律や大綱が策定され、具体的な施策が実施されるなどの進展も見られます。一方、前回勧告された予算措置や資源配分、データ収集の改善については今回の勧告でも指摘され、対策が十分に進んでいるとは言えず、折しも国会では、子どもの貧困対策の推進に関わる法律の改正が審議され、子どもの貧困対策の推進に関する大綱の見直しがなされようとしています。
生活水準に関する項目で勧告された「子供の貧困対策に関する大綱を実施するために必要なあらゆる措置をとること」を、日本政府がどのように実行するか、国際社会から問われているのではないでしょうか。


セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利の実現を目指す団体として関係団体と協力し、子どもの権利委員会からの勧告をもとに内閣府をはじめとする関係省庁に対し、子どもの貧困問題解決に向け、さらなる具体的な施策の策定と遂行を提言していきます。

 

※1 外務省
※2 子どもの権利条約NGOレポート連絡会議
※3 厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」
※4 勧告本文の太字と下線は、子どもの貧困に関しての内容であることが分かりやすいように、セーブ・ザ・チルドレンが追加しました。



(報告:東京事務所 田代光恵)


 

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