企業連携(公開日:2019.09.11)
【インドでの連携促進】 インド会社法:法的義務としての社会貢献
世界有数の経済大国のゆくえ
インド経済は、ここ数年やや鈍化傾向がみられるものの、2016年から2018年の間の実質GDP成長率は、6%後半から8%前半で推移しており[1]、2030年には日本を抜き世界第3位の経済大国になるという見方もあります[2]。こうした経済状況を受け、インドへの日本企業の進出は着実に増加しており、2018年10月現在、インドに進出する日本の企業数は1,441社と10年前(550社)と比べ、その数は2.5倍強となっています。
一方で、ビジネスを展開していくにあたり[3]、インドの法制度や独自の商習慣、文化に直面している企業が多いのも事実です。2013年に改訂された会社法も、インドの独自性の一つにあてはまると言えるかもしれません。インド会社法は、1. 純資産が50億ルピー(約73.7億円)以上、2. 総売上高100億ルピー(約147億円)以上、3. 純利益が5,000万ルピー(約7,370万円)以上、の3要件のうち、少なくとも一つを満たす企業に対して、直近3年間における純利益の平均額の2%を、社会貢献に関する活動に支出することを義務付けています。インドにおいては、社会貢献がコンプライアンスとして捉えられているとも言えるでしょう。
デリー近郊の都市グルガオン。
写真の一帯は、サイバーシティと呼ばれ、インドの経済発展を象徴しています。
コルカタ近郊で線路脇に小屋を建てて暮らす一家。
経済発展が著しい地域がある一方、そうした状況からは想像を絶するような格差が存在します
極端な経済格差をはじめ、児童労働や人身取引など、子どもに関する社会課題に直面するインドでは、多くの企業が社会貢献に取り組もうとしています。インド国内で事業を展開する欧米の企業を例にとると、セーブ・ザ・チルドレンとの連携により、フィンランドの通信機器メーカーのノキアが、自然災害の頻発する州で通信技術を用いた災害用通信網整備事業を実施したり、スウェーデン発祥の家具チェーンIKEA(イケア)が、綿花栽培地で児童労働廃止に向けた取り組みを行ったりしています。
こうした事業は、単なる社会貢献にとどまりません。ノキアは、災害用通信網の運用を通じて、製品を改良し、新製品の研究開発に役立てることで、ビジネスアウトプットに繋げています。イケアの事例においても、インドをはじめ各国での同様の取り組みが評価され、環境に影響力のある企業ランキング[4]や、持続可能な綿花調達ランキング[5]で上位にランクインするなど、社会貢献が企業価値の向上に結び付いています。成長を続けるインド市場は、テクノロジーに関するイノベーションだけでなく、企業による社会課題への取り組みについても、日々イノベーションが起こっている現場だと言えるでしょう。
日本企業の動き
インドに進出する日本企業の中にも、職業訓練や地元NGOを通じた支援など、社会貢献活動を長年にわたって積極的に行っているところが多く存在します。その一方で、会社法の定める要件に該当し始めたばかりで、どのような形で社会貢献に関する支出を行えばよいかが分からない企業や、社会貢献活動に支出をする以上は、その使途や効果を明らかにし、社員の意識向上やステークホルダーへの説明責任に役立てたいと考える企業も増えていると聞きます。
[1] ジェトロ 基礎的経済指標 https://www.jetro.go.jp/world/asia/in/stat_01.html
[2] HSBC Globalresearch “The World in 2030” https://enterprise.press/wp-content/uploads/2018/10/HSBC-The-World-in-2030-Report.pdf
[3] ジェトロ ビジネス短観 2018年12月26日 https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/12/c623b21a81ba3407.html
[4] Influence Map
https://influencemap.org/filter/List-of-Companies-and-Influencers
[5] Sustainable CottonRanking https://www.sustainablecottonranking.org/check-the-scores