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アドボカシー
(公開日:2020.06.22)

国連事務総長は、子どもたちの殺害、学校や病院への攻撃への加担者を除外した理由を説明すべき『子どもと武力紛争に関する国連事務総長年次報告書』発表

 
6月15日、国連は『子どもと武力紛争に関する国連事務総長年次報告書』(*1)を発表しました。 この報告書では、子どもの人権を侵害している国や組織を列挙した「恥のリスト(the List of Shame)」を毎年公表しています。今年、グテーレス国連事務局長はこの「恥のリスト」からサウジアラビアを除外しました。私たちはこの取り扱いに衝撃を受けています。また、子どもたちを殺害し重傷を負わせ、学校や病院を攻撃したとしても、力のある武力紛争当事者は何ら罰せられることはないことに警鐘を鳴らします。

これまでの報告書と同様に、今年の報告書では、2019年の武力紛争下において確認された、6つの形態の子どもの権利の重大な侵害行為(*2)の状況を報告しています。一方で、サウジアラビア主導の連合軍によるイエメンでの222人の子どもたちの殺傷、4つの学校や病院への攻撃に対し、同連合軍に対する責任追及を行っていません。

また、ミャンマー国軍は「恥のリスト」に掲載されている一方で、子どもの徴兵・徴用を行っているにもかかわらず、この行為に関するリストには掲載されていません。同国軍は、子どもの徴兵を体系的に監視し、止めることができておらず、仮に徴兵に関与した者がいたとしても責任が追及されていません。国連は、2019年に8人の少年の徴兵・徴用事例を確認しています。ミャンマー国軍をリストから除外する決定をしたことで、子どもの徴兵・徴用を防止し、対策を立てるための持続的な制度を確立する努力が台無しになります。また、ミャンマー国軍は子どもの殺傷や性的搾取という2つの重大な侵害を行ったことに関してリストに掲載されていますが、国軍がこの2つの重大な権利侵害の防止に向けた迅速な行動を起こすか、注視していく必要があると考えています。

こうした子どもの権利の侵害者をリストから外すという危険な動きは、2016年以降、潘基文前国連事務総長の時代から見られています。前事務総長は当時、イエメンでの権利侵害についてサウジ・アラブ連合軍をリストから除外しましたが、それが政治的圧力によるものだったことを認めています。

また、アフガニスタンやシリア、パレスチナ自治区といった国や地域における、重大な権利侵害を犯している武力勢力もリストからは外されています。結果として、侵害の事例が確認されているにも関わらず、当事者は責任を問われることもなく、学校や病院への攻撃や子どもの殺傷といった子どもの権利の侵害に関するリストからも除外されているのです。

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長インゲル・アッシンは、今年の報告書に対して次のように述べています:
「今回、国連事務総長が、統一された基準と精査に基づいて紛争の責任者のリスト掲載の可否判断しなかったことに衝撃を受けています。いくつかの国々が他に比して優遇されていることは明確であり、事務総長が子どもたちではなく政治に重きを置いたことが見て取れます。結果として、力を持つ国や組織とつながりのある武力紛争当事者は、子どもたちの命や生活を破壊しても責任を問われないことになっています。

権利侵害者を報告書のリストに掲載するという決定は、政治的な圧力や配慮なしに行われるべきです。それが国連安全保障理事会の常任理事国からの圧力であれ、力のある友人を持つ国々からの圧力であれ、判断を左右することがあってはなりません。判断は一つの基準に従って下されるべきです。つまり、国連として、紛争下において子どもの権利の重大な侵害が確認されたかどうか、という基準です。

紛争に関与している関係者にとって、国連と協議し、子どもに対する権利侵害に取り組む行動計画を実行することが、子どもに対する暴力をなくすための大きなインセンティブになります。なぜなら、行動計画を実施することが、リストから除外される条件となっているからです。もし行動計画を実施せずとも、政治的な圧力をかければリストから外してもらえるというダブルスタンダード(二重基準)が認められてしまえば、国連に対する信頼は完全になくなってしまいます。私たちは、報告書のリストにどの武力紛争当事者を掲載するかしないかの決定を政治的配慮ではなく、一つの基準(*3)に基づいて行うという、厳格かつ客観的で、透明性のあるプロセスを求めます。

こうしたプロセスを持つことで、報告書はその信頼を取り戻す必要があります。国連事務総長がリスト掲載・非掲載の基準をどのように設定したのかについて独立した評価を行うこと、国連として確固たるデューデリジェンス(適正評価)の制度を策定することが必要です。透明性が向上すれば、法に違反した当事者をかばうためにとっている行動の全容が明らかになり、事務総長を圧力から守ることにつながるでしょう。」

国連は設立から75年にわたり、世界の平和維持に貢献してきました。同時に、特に戦争中においては、子どもたちの安全の最終的な守護者であるべきです。政治的な圧力に屈することにより、国連はそうした地位を損ないつつあり、そのことをセーブ・ザ・チルドレンは深く憂慮しています。

*1:報告書本文(英語)はこちら
*2:2005年国連は、紛争下における「6つの形態の子どもの権利の重大な侵害行為」について合意しました。以降毎年、本報告書にて侵害行為について報告しています。6つの重大な権利侵害とは、1)子どもの殺害と傷害行為、2)子どもの軍への徴兵と利用、3)子どもに対する性的暴力、4)子どもの誘拐、5)学校や病院に対する攻撃、6)子どもに対する人道支援のアクセスの拒否、を指します。
*3:2010年の子どもと武力紛争年次報告書では、武力紛争当事者は以下の場合にリストから外すとされています:「少なくとも過去1年、指摘のあった、リスト掲載者によるあらゆる子どもに対する重大な権利侵害行為が停止されたことが、国連により確認された場合」

 

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