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アドボカシー
(公開日:2021.07.05)

紛争当事者への責任追及は未だ不完全 『子どもと武力紛争に関する国連事務総長年次報告書』発表

 
国連は6月21日、『子どもと武力紛争に関する国連事務総長年次報告書』 を公表しました。この報告書では、子どもの人権を侵害している国や組織を列挙した「恥のリスト(the List of Shame)」が報告書の付属書として毎年公表されています。
 


国連により検証された記録によると、2020年、イエメンにおける紛争の当事者であるサウジアラビア・アラブ首長国連邦(UAE)主導の連合軍は、少なくとも194人の子どもたちを殺傷しました。しかし、昨年の報告書同様 、今年も同連合軍は「恥のリスト」に掲載されませんでした。セーブ・ザ・チルドレンは、リストから除外されたことにより、同連合軍は子どもの権利に対する重大な加害者としての責任を問われることなく、イエメンの子どもたちの生活を破壊し続けることが許されてしまっていると警鐘をならします。

また、今年もリストから同連合軍を除くという、アントニオ・グテーレス国連事務総長の決断は極めて残念です。2020年には、『殺傷行為が大幅に減少し、かつその状態が持続していることがない限り次回はリストに掲載する』という事務総長との約束のもと、同連合軍はリストから外されました。しかし今年もリストに掲載されなかったことで、子どもの犠牲者が昨年の222人から194人になったことが「十分な」進歩であるというメッセージを事務総長が発信したことになります。この「恥のリスト」に掲載されるということは、紛争下において子どもの権利を侵害し、子どもの安全を守っていないという烙印を押されることです。

セーブ・ザ・チルドレンは、政治的に強力な同盟関係を有していれば、子どもの権利の重大な侵害行為を行っているにもかかわらず同リストから除外され、再び権利侵害に対する責任を免れることが可能になると懸念します。

今年の報告書では、昨年リストから除外された、ミャンマー国軍が「リストB」に掲載されました。「恥のリスト」は「リストA」と「リストB」に分けられており、リストAは、「子どもの権利の重大な侵害を行った国や組織」、リストBは、「子どもの権利侵害を行ったが、子どもが犠牲にならないよう改善の措置を取っている国や組織」を列挙しています。ミャンマー国軍は2019年に、208人の子どもを徴兵・徴用したにもかかわらず、昨年の報告書のリストから外されました。また2020年には、726人の子どもを徴兵・徴用しており、前年に比べて3倍以上の人数になっています。

セーブ・ザ・チルドレンは、ミャンマー国軍がリストに加えられたことを歓迎しますが、より軽い「リストB」であったことに懸念を表明します。今年2月以降の軍事クーデターとそれに続く暴力により、ミャンマーの子どもたちは、徴兵やその他の重大な権利侵害を受ける危険性にさらに直面しています。

また、アフガニスタン国軍が子どもの殺傷、ソマリア政府軍が子どもへの性暴力を行ったことによりリストに掲載されました。このことは、すべての紛争当事者が確実に同じ基準に従うようにするための前向きな一歩と言えます。

しかしながら、残念なことに、アフガニスタンやパレスチナ自治区、シリアなどの他の紛争地におけるその他の当事者は、国連が毎年のように重大な侵害の数々を確認しているにもかかわらず、未だリストに掲載されていません。リスト掲載を免れた他の当事者同様、子どもの権利に対する重大な侵害に対する責任を問われずにいるのです。

リスト以外では、カメルーンやブルキナファソ、チャド湖周辺地域が、「懸念される状況」として報告書本文中に初めて取り上げられました。セーブ・ザ・チルドレンは、これらの国や地域での子どもに対する犯罪が確実に記録されたことは、子どもに対する権利侵害の加害者が最終的に責任を問われるようになるための重要な一歩として、歓迎します。その一方で、エチオピアやモザンビーク、ウクライナは、「懸念される状況」に含まれませんでした。セーブ・ザ・チルドレンは、この決定に失望しています。これらの国々における子どもに対する多くの犯罪が記録されず、説明責任が果たされないままになってしまうからです。

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長インゲル・アッシンは、次の通り訴えます。
「私たちは、国連事務総長が自らの決定を再考し、世界中の紛争当事者に同じ基準を課すことを強く求めます。武装勢力を「恥のリスト」に加えるかどうかは、政治的な理由ではなく、子どもに対する6つの重大な権利侵害行為(注1)が行われたどうか、という国連の検証した事実を基準にして決定されるべきです。

今年の報告書では、進展もありましたが、同じ基準を公正にかつ一貫して適用しないことは、子どもたちに壊滅的な結果をもたらすことでしょう。私たちは、このようなダブルスタンダードによって、殺傷、学校への攻撃、徴兵・利用、人道支援へのアクセス拒否など、子どもの権利に対する侵害行為を防ぐことがいかに困難になるか、身をもって知っています。

1997年の『子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表』の任務の設置に私たちは勇気づけられました。国際社会が政治を超えて取り組めることの可能性が示されたからです。この新たな任務は、子どもたちの生活を破壊する紛争当事者の責任を追及し、最終的に紛争下の子どもたちを守るための最も強力な手段の一つなのです。

この任務が力を発揮できるか否かは、その報告書が信頼できるかどうかにかかっています。もし信頼できなければ、紛争下の子どもの権利侵害の加害者に責任を取らせるための最も重要な手段の一つを失うことになります。」

来年、子どもと武力紛争に関する特別代表は、国連安全保障理事会によりその任部が設置されてから25年を迎えます。これまで紛争下の子どもたちに与えた多くの良い影響を振り返り、今後数十年の間に何が必要かを見据えるまたとない機会となります。そのためには、報告書の「恥のリスト」を政治化してきた問題を認識する必要があります。国際社会は偏狭な国益を捨てて、紛争下の子どもたちを守ることを優先する勇気を持たなければなりません。


注1:国連による6つの重大な権利侵害の形態とは、1)子どもの殺害と傷害行為、2)子どもの軍への徴兵と利用、3)子どもに対する性暴力、4)子どもの誘拐、5)学校や病院に対する攻撃、6)子どもに対する人道支援のアクセスの拒否、を指します。

 

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