こどものケンリ

大人も子どもも、
知っておきたい話

「子どもの権利」という言葉を聞いたことはありますか?「子どもの権利」は、すべての子どもたちが健やかに、自分らしく育つために必要な「当たり前のこと」です。そして、子どもたちの権利を守るための世界共通の約束ごとが、子どもの権利条約です。子どもの権利条約は、国が守るべきものですが、日頃の子どもとの関わりへのヒントにもなります。ここでは、子どもの権利条約について少し学んでみましょう。

子どもの権利条約の
誕生まで

歴史を振り返ると、子どもは常に、過酷な労働や紛争などの犠牲となってきました。

セーブ・ザ・チルドレンの創設者であるエグランタイン・ジェブは、第1次世界大戦中に荒廃したヨーロッパの地で、病気や飢えに苦しむ子どもたちを支援しました。その経験から、ジェブは子どもの権利宣言(ジュネーブ宣言)の草案を作成、その草案は1924年に国際連盟で採択されました。ジュネーブ宣言によって、人類は子どもに対して最善のものを与える義務があり、子どもは特別な保護を受ける権利がある、という認識が国際的に広がったのです。

1948年12月、国連は、世界人権宣言を採択しました。世界人権宣言は、私たち誰もが、どこにいても、人間として生きていくために必要で、すべての人と国が守らなくてはいけない基本的人権を定めたものです。もちろん、子どもも「すべての人」の中に含まれます。世界人権宣言第25条では、すべての子どもは特別な保護と援助を受ける権利があるとされています。しかし、ここではまだ、子どもは保護されるべき対象としか捉えられていません。

1978年、ポーランド政府が子どもの権利条約の草案を提出、その後10年という長い時間をかけて議論され、1989年、子どもの権利を包括的にまとめた条約が国連で採択されました。子どもの権利条約は、子どもを保護の対象としてだけではなく、一人の人間として認め、自己決定を含めた権利の主体として捉えた点で、画期的な条約です。

日本は子どもの権利条約を1994年、世界で158番目に批准しました。現在、米国を除く世界のすべての国・地域が子どもの権利条約を批准し、それぞれの国内の法律や政策を通じて、子どもの権利を守ることを約束しています。

子どもの権利条約には
何が書かれているの?

子どもの権利条約は、子どもを一人の人間として認め、権利の主体として捉えたものです。世界中のすべての子どもたちが、子ども時代を自分らしく健康的に、安心して豊かに過ごせるために必要な権利をまとめています。条約を批准した国(締約国といいます)の政府は、これらの権利を守る義務があります。

4つの一般原則

子どもの権利条約には、4つの一般原則があります。これは、国だけでなく、地方自治体や親・養育者、学校、企業、NGO/NPOなど、子どもに関わるさまざまな関係者が前提とすべき原則といえます。

差別の禁止(2条)
すべての子どもは、あらゆる差別を受けない権利を持っています。

子どもたちは、子ども自身とその親の人種、性別、意見、障害の有無、社会的出身、貧富の差など、あらゆる差別から守られなければなりません。国は、子どもたちを差別から守るために、さまざまな対策をとる義務があります。

子どもの最善の利益(3条)
すべての子どもは、国や大人から、
子どもにとって何が最も良いことなのかを
考えてもらう権利を持っています。

子どもに関することを決める場合、国の機関や学校、福祉機関なども含め、あらかじめ決められたルールではなく、まず第一に、「子どもにとって一番良いこと(最善の利益)」を基準としなければなりません。

「子どもにとって一番良いこと(最善の利益)」は、子どもの権利条約にあるすべての権利が守られ、子どもの体やこころ、社会的な発達を保障することを目的としています。

「子どもにとって一番良いこと(最善の利益)」は、その子どもの状況、背景、ニーズを考慮に入れながら決めなければなりません。その社会(国の機関や学校、福祉機関など)や親の都合を、子どもに対して勝手に押し付けることがあってはいけません。

子どもは大人と比べて、自分の利益について強く主張できないことがあります。また、子どもの利益は、強調しないと見過ごされてしまうこともあります。そのため、「子どもにとって一番良いこと」を決めるときには、子どもの意見を尊重することが大切です。第3条は、4原則の一つである第12条の聴かれる権利(意見表明権)と、密接に関わっています

生命・生存・発達の権利(6条)
すべての子どもは、生きる権利・育つ権利を持っています。

すべての子どもの命は守られるべきです。子どもは社会の中で自分の能力を発達させるために、また、体やこころの成長発達のために必要な医療や教育などを受けることが保障されます。

聴かれる権利(意見表明権)(12条)
すべての子どもは、自分に影響を与えることについて、
自分の意見を表し、
その意見が重視される権利を持っています。

自分に関わるあらゆることについて、子ども自身がきちんと自分の意見を言うことができ、またその意見が正当に重視されなければなりません。特に、国の機関は、子どもに影響を及ぼす決定をするときに、子どもの意見を聴く機会を十分に確保しなくてはいけません。

例えば、地方自治体が学校を移転しようとする場合や、国が子どもに関わる法律をつくろうとする場合、子どもたち自身はどう考えているかを十分に意見徴収し、その意見を十分に尊重しなくてはいけません。

子どもは、自分が尊重され、安心を感じる環境ではじめて、自分の意見を自由に表すことができます。国や大人は、学校や裁判所、子ども支援施設などさまざまな場所で、そうした環境を整える義務と責任があります。

また、自分の気持ちを言葉で表現できない年齢の子どもであっても、子どもの身振りや、表情、お絵描きや遊びなど、言葉ではない形のコミュニケーションを理解して尊重することが大切です。

国連子どもの権利委員会*は、家庭の中での子どもの聴かれる権利も大切であり、幼いころから自由に意見を表し、それを真剣に受け止めてもらえることは、子どもの発達や自立、家族の関係性の強化につながると指摘しています。また、家庭における暴力を予防する役割もあるとも指摘しています。

国は、家庭でも子どもの意見が尊重される環境をつくっていくために、社会啓発を行い、親を支援していくことが求められています。

*国連子どもの権利委員会:独立した専門家からなる委員会で、国連子どもの権利条約を批准した国が条約に書かれている権利を守っているかを定期的に確認し、子どもの権利を発展させるためのさまざまな活動を行っています。

4つの原則のほかにも、子どもの権利条約には、
子どもが健やかに育つために
必要な権利がたくさん書かれています。
ここで紹介するのはほんの一部です。

暴力から守られる権利(第19条)

すべての子どもは、親からの暴力やひどい扱いから守られる権利を持っています。

家庭内での子どもの暴力は、長年にわたって見過ごされてきました。

国連子どもの権利委員会は、あらゆる形の暴力から子どもを保護するために、家庭内での体罰や子どものこころを傷つける罰も例外ではなく、法律によって禁止すべきだと各国に訴えています。

最近では、体罰や言葉による暴力が子どもの発達や脳に与える負の影響も知られるようになり、家庭内での体罰やこころを傷つける罰を禁止する国が増えています。日本も2020年4月から、親や養育者などによる子どもへの体罰が禁止となりました。

教育を受ける権利/教育の目的(第28条、第29条)

すべての子どもは同じように教育を受ける権利を持っています。
教育の中で、自分のこころや体の持つ力を伸ばしていく権利を持っています。

子どもの権利条約は、子どもが教育を受ける権利(第28条)とあわせて、教育の目的(第29条)を掲げています。教育の目的は、子どもの人格や能力を最大限に伸ばしていくことであり、人権や平和、多様性、自然環境を尊重する考えを育むことです。

マイノリティ及び先住民族の子どもの権利(第30条)

マイノリティまたは先住民族に属する子どもは、自分が属する集団のほかのメンバーと一緒にその文化を享受し、自分たちの宗教を信仰し、自分たちの言語を使用する権利があります。

休み、遊ぶ権利(第31条)

すべての子どもは、休んだり遊んだりすることができ、またスポーツ・文化・芸術活動に参加する権利を持っています。

遊びとレクリエーションは、子どもたちの健康とウェルビーイング*にとって重要であり、子どもの創造性や想像力、また社会性や情緒的な力を育みます。

国は、子どもが体やこころを休めたり、ゆとりを持って年齢にあった遊びやレクリエーション活動をしたりする機会の提供を奨励し、また、文化や芸術活動に参加できるよう促進しなくてはいけません。

*ウェルビーイングとは、健やかであること、およびそうした状態に到達する過程のことであり、身体的、精神的、社会的、認知的健康を指し、個人にとってよいことを含む。すなわち、意義のある社会的役割への参加、幸せで希望に満ちていると感じること、善良な価値観に従って生活すること、良好な社会関係と支持的な環境があること、ライフスキルを使って困難に対処すること、安全で、必要な保護を受け、質の高いサービスにアクセスできること、などが含まれる。
~ 『人道行動における子どもの保護の最低基準』(2018年 日本語制作・公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)P.261 より ~

性的搾取から守られる権利(第34条)

国は、あらゆる形態の性的な暴力と搾取から子どもを守る義務があります。

作成協力/東京経済大学教員 寺中誠

参考資料

  • 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン 『どうなる?子どもの体罰禁止とこれからの社会』 (外部サイト)
  • 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン イラスト付『生きる、育つ、守られる、参加する。子どもの権利条約』 (PDF)
  • 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン 『子どもの権利条約 全文 (民間訳)』 (外部サイト)
  • 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン 『Be Partners 子どもの権利教材』(p.87「5-2 子どもの権利の歴史」)
  • 厚生労働省 体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~(外部サイト)
  • 国連子どもの権利委員会・一般的意見8号「体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利」平野裕二 訳 (外部サイト)
  • 国連子どもの権利委員会・一般的意見14号「自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項)」平野裕二 訳 (外部サイト)
  • 国連子どもの権利委員会・一般的意見12号「意見を聴かれる子どもの権利」平野裕二 訳(外部サイト)
  • 国連子どもの権利委員会・一般的17号「「休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利」平野裕二 訳 (外部サイト)
  • 『季刊教育法』1994年6月臨時増刊号 子どもの権利条約全文対訳表