3. 体罰についてよくある質問

Q1 そもそも体罰って何ですか?

体罰とは、苦痛や不快感を与えるための罰です。

国連子どもの権利委員会は、体罰等がどのような行為なのか、なぜ禁止すべきなのかを明確に示しています。多くの国は、これらの文書を体罰禁止の参考としているようです。体罰の定義については、詳しく見ていきましょう。

  • どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ何らかの苦痛または不快感を引き起こすことを意図した罰
  • …ほとんどの場合、これは手または道具――鞭、棒、ベルト、靴、木さじ等――で子どもを叩くという形で行なわれる…
    …蹴ること、子どもを揺さぶったり放り投げたりすること、引っかくこと、つねること、かむこと、髪を引っ張ったり耳を打ったりすること、子どもを不快な姿勢のままでいさせること、やけどさせること、薬物等で倦怠感をもよおさせること、または強制的に口に物を入れること(たとえば子どもの口を石鹸で洗ったり、辛い香辛料を飲み込むよう強制したりすること)をともなう場合もありうる。子どもの権利委員会一般的意見8号※1

国連子どもの権利委員会は、子どもは体罰だけでなく子どもの品位を傷つける罰(心を傷つけるような罰)からも保護される権利をもっているとことを明らかにしました。日本においても、この定義を参考に、体罰に関するガイドラインが作成されています。

Q2 子どもの頃にたたかれていたけど、ちゃんと育ちました。親がたたいて育てたからこそ、今の自分があると思います。

「子どもの頃にたたかれたけれど、私は普通の大人になれました」と言う声を聞きます。たしかに、私たちの社会には、あらゆる苦い経験を重ねても「普通の大人」になる人がいます。しかし、苦い経験そのものが、彼らを「普通の大人」にしたわけではなく、実際には、苦い経験にどのように向き合ったかが、彼らを「普通の大人」にしたのです。

そして、一人の人間の人生を、たたかれたり、怒鳴られたりして育ってきた人生と、そうでない人生に分けて比較することはできません。あなたが体罰を受けて育ってきた場合、体罰のない養育環境で育ったならばどうなっていたかは誰にも分からないはずです。

Q3 親は子どもをそれぞれの方法で育てる権利があります。極端な虐待のケースでなければ、許されるのでは?

いまでは、子どもは親の所有物ではなく、固有の権利をもつ一人の人間と見る考え方に変わってきています。子どもには人権があり、それは家庭の中でも大切にされるべきです。

子どもの持つ権利は、親を含む誰もが持つ権利と同じです。

子どもが家庭における暴力から守られることは、大人が、親しいパートナーによる暴力から守られることと同じであり、プライバシーの侵害や家庭生活への介入にはあたりません。そして、体罰が子どもにとってさまざまな悪影響を及ぼすということを知ることが大切です。

Q4 愛情をもってたたくことは、ただ殴ることと違いますよね?

子どもにとっては、殴られる方が「愛情を込めてたたかれる」よりも、痛みは大きいのかもれません。しかし、どちらも暴力であり、子どもの心や身体を傷つけるものです。

子どもへの愛情と子どもを痛めつける行為を結びつけようとすることは、とても危険なことです。「愛情をこめてたたく」といえば、子どもへの悪影響が軽くなるかのような表現に見えますが、そのことで子どもの権利を侵害している暴力行為を見えにくくしています。

Q5 虐待と体罰は違うと思います。体罰の禁止はやりすぎではないですか?

「軽くたたくことと虐待とは違う」と主張する人がいます。暴力の程度が問題であるという主張です。

大人は暴力の程度をコントロールすることができる、ということが前提の主張ですが、たたくときには、意図していたよりも強い力が使われており※2、その力は次第に強くなっていくことが研究結果で明らかになっています※3

そして、忘れてはならないことは、力の強さに関係なく、たたくという行為自体が、暴力から守られるという子どもの権利を侵害しているということです。

多くの虐待の実態は体罰であり、現実的には、虐待と体罰を区別することはできません。高齢者に対する暴力の議論では、このような暴力の境界線をめぐる議論は存在しません。どのような暴力も一切認められないということは、明確です。

Q6 子どもをたたくことがやめられません。なぜでしょうか?

大人が「しつけ」として、子どもをたたいたり、痛みを加えたりすることをやめられない背景には、いくつかの理由があります:

1つ目は、大人自身の経験です。
多くの大人が、子どもの頃にたたかれて育ったり、子育ての中で自分の子どもをたたいたことがあります。私たちの誰もが、親や自らの子育てを悪く思いたくありません。その気持ちが、体罰が、子どもの権利を脅かす根本的な問題であると認識することを難しくしているのです。

親や養育者は、その時代の社会の考え方に倣った子育てをしてきましたが、時代は変わりつつあります。子どもとのポジティブで、暴力的でない関係性を築くことが必要となってきています。

2つ目は、行動が確立していることがあげられます。
大人はしばしば、怒り、ストレス、我慢の限界を超えたことによって子どもをたたいてしまいます。多くの大人は心の奥底で、たたくことは「しつけ」をするための理性的な行動というより、その場で起きていることに対する感情的な行動であることを理解していますが、こうした行動は、繰り返されるほど、たたくという行為が子どもの手に負えない言動への対処法として確立してしまいます。そして、確立してしまった行動を変えるのは簡単ではありません。

しかし、確立された行動を変えることはできます。政府が、体罰によらない子育てや子どもの権利に関する啓発や教育などへ必要な支援を提供したり、対策を講ずるなどしていけば、親・養育者は、子どものさまざまな言動への対応として暴力をふるう必要性を感じずに、体罰ではない、他の方法を考えていくことができるでしょう。

3つ目は、暴力的でない子育て方法に関する情報や知識の不足です。
体罰禁止の法改正は、親、子ども、社会全体を対象とした、体罰によらない、非暴力的な子育てに関する啓発活動や、サポートと同時に行っていく必要があります。そうすることで親や養育者自身が、体罰に寄らない子育てについての知識や方法を身に付けられるようになります。

Q7 体罰が禁止されると、わがままで自制心のない子どもになってしまうのではないですか?

そういったことは決してありません。
しつけと、罰は違います。本来、しつけは、力に頼るものではありません。しつけは、理解、お互いの尊重、忍耐、効果的な相互のコミュニケーションから成り立つものです。

親がしつけと称して子どもをたたくとき、子どもが学ぶのは、罰を避けるためだけに「良く振る舞う」ことです。そして、人との衝突や対立を解決するために、暴力を用いることは許されることだと学びます。

親や養育者が、自身の子どもも含む人の尊厳や、暴力から守られる権利を尊重するなら、子ども自身もそうすることを学びます。親や養育者が、ポジティブで、体罰によらない方法でしつけるなら、子どもは他者を尊重する気持ちを失わずに、対立を解決することができることを学習します。

体罰によらない子育てとは、子どもを甘やかすこととは程遠い、他者への配慮や、自分の行動の結果をよく考えることを子どもに教えることになります。

 

Q8 体罰が犯罪とされたら、多くの親が捕まってしまうのではないですか?

法律で体罰を禁止する目的は、親を逮捕したり、罰したりすることではありません。

体罰禁止の法改正は、子どもの権利を保障し、非暴力的な子どもとの関係づくりを、社会全体で進めることが目的です。

プライベートな空間である家庭内であっても、私たち大人が、他の大人に手をあげることが許されないことと同様に、子どもに手をあげることは許されない、という確固たるメッセージを届けることが、目的となっています。

Q9 子どもが危険なことをしていたら、それを分からせるためにたたくのは許されるのではないですか?

大人が、子どもを危険から守るために、危ない場所や物から子どもを遠ざけることは当然のことです。

特に、乳幼児や幼児期の子どもは、日ごろからその必要があるでしょう。
子どもが火に向かってハイハイをしたり、危険な道路へ走って行ったりしたら、親は、子どもをつかまえ、抱き上げ、危険について諭し、教えるでしょう。

しかし、そうした時に、子どもをたたいて痛みを与えてしまっては、親や養育者が子どもの安全を守る、という前提をくつがえしてしまいます。

国連子どもの権利委員会は、以下のように説明しています※4

「委員会は、子ども、とくに乳幼児の養育およびケアのためには、子どもを保護するための身体的な行動および介入が頻繁に必要とされることを認識する。これは、何らかの苦痛、不快感または屈辱感を引き起こすために意図的かつ懲罰的に行なわれる有形力の行使とは、まったく別である。私たちは、大人として、 保護のための身体的行動と懲罰的な暴行との違いを承知している。子どもに関わる行動との関連でこのような区別を行なうことは、決して難しいことではない」

子どもの安全を守るために、大人が力を行使する行為と、子どもを罰し意図的に傷つける行為は、明らかに異なります。

体罰に関するQAの詳しい内容はこちら『子どもに対するあらゆる体罰を禁止するために よくある質問集』(PDF)

【引用文献】
※1 “子どもの権利委員会 一般的意見8号(2006年)体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利(とくに第19条、第28条2項および第37条)”平野祐二訳 http://childrights.world.coocan.jp/crccommittee/generalcomment/genecom8.htm (参照:2019-10-25)
※2 Kirwaun,S.&Bassett,C.(2008), Presentation to NSPCC: Physical punishment, British Market Research Bureau/National Society for the Prevention of Cruelty to Children
※3 Shergill,S.S.et al (2003), “Two eyes for one eye: The neuroscience of force escalation”, Science, vol.301,11 July 2003,p.187
※4 一般的意見8号 パラグラフ14

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1. 体罰としつけは何が違うの?

2. 体罰禁止のポイント

4. 体罰のない社会をつくるのために

5. 世界では、どうなっているのでしょう?

参考資料一覧