4.体罰のない社会をつくるために

体罰禁止の法改正は、体罰をなくすための第一歩です。本当に体罰をなくしていくには、「体罰はいらない」という意識が、社会の中に浸透することが必要です。そのために、セーブ・ザ・チルドレンが考える政府が取組むべき課題は次の5つです。

セーブ・ザ・チルドレンが政府へ求めていること※1 

課題1 親だけでなく、すべての人による体罰の禁止、体罰以外の子どものこころを傷つける行為も明示的に禁止する

今回の法改正では、親などによる体罰が禁止されましたが、それだけでは不十分です。子どもに関わるすべての人による体罰が明示的に禁止されるべきです。また、体罰だけではなく、怒鳴る、脅すといった子どもの品位を傷つけるような行為も明示的に禁止されるべきです。※2

課題2 大規模な啓発活動を実施する

ヨーロッパでは、体罰の禁止と同時に、社会全体への啓発活動を実施することで体罰が大幅に減少したという研究報告があります。法改正が行われた今、あらゆる機関による大規模で長期的な啓発活動が必要です。その際、以下のポイントを広く伝えることが大切です。

① 法律ですべての人による体罰が許されなくなること
② 禁止される体罰には、軽い体罰も含まれるということ 
③ 暴言などの子どもの品位を傷つける行為も許されない行為であること
④ 子ども自身に、体罰によらない養育・教育を受ける権利があることを知ってもらうこと

課題3 子育て支援プログラムを含めた子育て支援施策を拡充する

啓発活動とともに、体罰のない社会を目指すためには、さまざまな子育て支援策の充実が重要です。なかでも、体罰によらない子どもとの向き合い方を推進する「子育て支援プログラム」の拡充は急務です。さらに、関係機関が効果的に連携し、訪問型支援、保護者や子どもへの心理療法等ニーズに応じた支援・援助などを行うことが求められます。

課題4 虐待・体罰等防止のための予算の確保、定期的な調査の実施

今後、社会全体への啓発活動やすべての親に向けた子育て支援を推進するためには十分な予算の確保が重要です。また、効果的な施策の実施のためには国内における罰等や虐待に関するデータの収集が欠かせません。残念ながら日本では、国を挙げての大規模な調査がほとんど実施されておらず、国連子どもの権利委員会からも勧告を受けています。効果的な施策を実施するためにも、国内の体罰や虐待の現状や人々の意識を把握するための、幅広い全国的な調査が求められています。

課題5 民法の懲戒権規定を削除する

民法では、親が監護や教育に「必要な範囲内」で子を懲戒する権利を認めています。これを懲戒権といいます。懲戒権が子どもを虐待する親の弁解として利用され、子どもを保護する際に妨げになるといった指摘があり、セーブ・ザ・チルドレンや多くのNGO・NPOは、懲戒権の規定そのものを削除することを求めています。

2019年の法改正では、2年を目途に懲戒権について削除も含めて検討することが決められ、同7月から政府の専門機関(法制審議会)が懲戒権の扱いの検討を始めています。

【資料】
※1 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン/NPO法人 子どもすこやかサポートネット/認定NPO法人 児童虐待防止全国ネットワーク 共同声明「虐待や体罰等の子どもに対する暴力のない社会を実現するために
※2参考:国連子どもの権利委員会「あらゆる場面におけるあらゆる形態の子どもに対する暴力の絶対的禁止」(一般的意見13号パラ41)「体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰を民事法または刑事法において明示的禁止する事が必要」(一般的意見8号パラ34)