アフリカ(公開日:2025.04.04)
【ルワンダ】低コスト・プライベートクリニックのモデルづくりを通じた保健医療サービスへのアクセス向上パイロット事業
アフリカ東部に位置するルワンダは、GDP(国内総生産)が2000年の20.7億米ドルから2023年までに141億米ドルまで増加するなど、近年目覚ましい経済成長を遂げており、「アフリカの奇跡」とも言われています[1]。
子どもの保健・栄養分野においても改善がみられ、例えば5歳未満児死亡率については、近年減少傾向にあります。しかし、依然として1,000人中38人が亡くなっており、これは26人に1人が5歳を迎える前に命を落としていることを意味します[2]。さらに、慢性的な栄養不足が原因で発育が阻害されている5歳未満の子どもは33%にのぼります[3]。
ルワンダ政府は近年UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成を目指し、さまざまな政策を行っています。UHCとは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」状態を意味します。たとえば、村レベルで活動を行うコミュニティ・ヘルス・ワーカーの整備や医療保険制度の導入、草の根レベルの地域保健医療サービス拠点であるヘルスポストの新規設置が進められています[4]。
一方で、ヘルスポストの設置については、地理的偏りがあり、特に農村地域では少なく、質の高い医療サービスへのアクセスには地域格差が存在しているといわれています。また、ルワンダは近隣国から多くの避難民を受け入れており、2025年時点で約13万人の難民がルワンダ国内の避難民キャンプなどで生活をしていますが[5]、避難民の医療サービスへのアクセスにも課題があります。
こうした課題を解決するため、セーブ・ザ・チルドレンは2023年から、「ルワンダにおける低コスト・プライベートクリニックのモデルづくりを通じた保健医療サービスへのアクセス向上パイロット事業」を開始しました。この事業では、セーブ・ザ・チルドレンがクリニックを建設し、その運営をナースプレナー(ナース(看護師)と起業家(アントレプレナー)を合わせた造語。看護師であり、クリニックを運営する意欲のある人物)に任せます。ナースプレナーはクリニックの運営を行い、運営が安定すると診察料などの収入でクリニック建設費用を返済していきます。数年後には、クリニックが黒字化し、自身の収入で運営を継続し、返済された費用を基に新たなクリニックを建設することが可能になる見込みです。
このモデルで運営されるクリニックでは、医師ではなく看護師が治療を主導し、オンライン診療を活用して診察の効率化を図ることにより、通常のプライベートクリニックと比較して、より低コストで治療を提供することができます。
なお、この事業は、セーブ・ザ・チルドレン・ルワンダの管轄のもと、子どもの権利実現に貢献しうるビジネスに支援を行うKumwe Hub(クムエハブ)[6]が事業の運営・管理を担当し、現在、南アフリカで同様のモデルを使って成果を上げているRhiza Babuyile(リザ バブイイレ)[7]が技術的支援を行っています。
2024年11月にはカモニ県に1ヶ所目のクリニックがオープンし、現在はナースプレナーを含む7人の職員が勤務しています。このクリニックでは、外来診察、予防接種、母子保健サービスなどの基本的な医療サービスが提供されており、1月までに子どもを含む約500人の患者が利用しました。
さらに、数ヶ月後には、キレへ県に位置するルワンダ国内の避難民キャンプのひとつであるマハマ避難民キャンプの近くに2つ目のクリニックがオープンする予定です。
この事業により、公的保健医療サービスへのアクセスが不十分な地域でも質の高い保健医療サービスが提供されます。また、クリニック建設にかかる初期投資費用が返済されることで、その資金を次のクリニック建設に回すことが可能となり、より多くの人が質の高い医療を受けられるようになり、ひいては、ルワンダのUHC達成に貢献することが見込まれます。
本事業は、多くの個人・企業のみなさまからの寄付によって支えられています。
引き続き、皆さまのご理解とご支援のほど、よろしくお願いいたします。
(海外事業部 酒井萌乃)
子どもの保健・栄養分野においても改善がみられ、例えば5歳未満児死亡率については、近年減少傾向にあります。しかし、依然として1,000人中38人が亡くなっており、これは26人に1人が5歳を迎える前に命を落としていることを意味します[2]。さらに、慢性的な栄養不足が原因で発育が阻害されている5歳未満の子どもは33%にのぼります[3]。
ルワンダ政府は近年UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成を目指し、さまざまな政策を行っています。UHCとは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」状態を意味します。たとえば、村レベルで活動を行うコミュニティ・ヘルス・ワーカーの整備や医療保険制度の導入、草の根レベルの地域保健医療サービス拠点であるヘルスポストの新規設置が進められています[4]。
一方で、ヘルスポストの設置については、地理的偏りがあり、特に農村地域では少なく、質の高い医療サービスへのアクセスには地域格差が存在しているといわれています。また、ルワンダは近隣国から多くの避難民を受け入れており、2025年時点で約13万人の難民がルワンダ国内の避難民キャンプなどで生活をしていますが[5]、避難民の医療サービスへのアクセスにも課題があります。
こうした課題を解決するため、セーブ・ザ・チルドレンは2023年から、「ルワンダにおける低コスト・プライベートクリニックのモデルづくりを通じた保健医療サービスへのアクセス向上パイロット事業」を開始しました。この事業では、セーブ・ザ・チルドレンがクリニックを建設し、その運営をナースプレナー(ナース(看護師)と起業家(アントレプレナー)を合わせた造語。看護師であり、クリニックを運営する意欲のある人物)に任せます。ナースプレナーはクリニックの運営を行い、運営が安定すると診察料などの収入でクリニック建設費用を返済していきます。数年後には、クリニックが黒字化し、自身の収入で運営を継続し、返済された費用を基に新たなクリニックを建設することが可能になる見込みです。
このモデルで運営されるクリニックでは、医師ではなく看護師が治療を主導し、オンライン診療を活用して診察の効率化を図ることにより、通常のプライベートクリニックと比較して、より低コストで治療を提供することができます。
なお、この事業は、セーブ・ザ・チルドレン・ルワンダの管轄のもと、子どもの権利実現に貢献しうるビジネスに支援を行うKumwe Hub(クムエハブ)[6]が事業の運営・管理を担当し、現在、南アフリカで同様のモデルを使って成果を上げているRhiza Babuyile(リザ バブイイレ)[7]が技術的支援を行っています。
2024年11月にはカモニ県に1ヶ所目のクリニックがオープンし、現在はナースプレナーを含む7人の職員が勤務しています。このクリニックでは、外来診察、予防接種、母子保健サービスなどの基本的な医療サービスが提供されており、1月までに子どもを含む約500人の患者が利用しました。
さらに、数ヶ月後には、キレへ県に位置するルワンダ国内の避難民キャンプのひとつであるマハマ避難民キャンプの近くに2つ目のクリニックがオープンする予定です。
この事業により、公的保健医療サービスへのアクセスが不十分な地域でも質の高い保健医療サービスが提供されます。また、クリニック建設にかかる初期投資費用が返済されることで、その資金を次のクリニック建設に回すことが可能となり、より多くの人が質の高い医療を受けられるようになり、ひいては、ルワンダのUHC達成に貢献することが見込まれます。
本事業は、多くの個人・企業のみなさまからの寄付によって支えられています。
引き続き、皆さまのご理解とご支援のほど、よろしくお願いいたします。
(海外事業部 酒井萌乃)
[1] World Bank,Rwanda https://data.worldbank.org/country/rwanda
[2] UNICEF, Rwanda https://data.unicef.org/country/rwa/
[3] National Instituteof Statistics of Rwanda (2021) The 2019-20 Rwanda Demographic and Health Survey(RDHS) https://statistics.gov.rw/dhs_Rwanda_2020
[4] Republic ofRwanda Ministry of Health, Fourth Health sector Strategic Plan July 2018-June2024 https://www.moh.gov.rw/fileadmin/user_upload/Moh/Publications/Strategic_Plan/FOURTH_HEALTH_SECTOR_STRATEGIC_PLAN_2018-2024.pdf
[5] UNHCR (2025) OperationalData Portal Rwanda https://data.unhcr.org/en/country/rwa
[6] https://kumwehub.com/
[7] https://rhizaholdings.africa/