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アドボカシー
(公開日:2025.03.06)

【開催報告】第4回自治体職員向け勉強会「子ども基本法施行からもうすぐ2年 子ども参加の現在」を開催しました

 

20234月にこども基本法が施行され、間もなく2年となる中、全国の自治体においても子どもの権利の推進や、子ども参加の仕組みの構築と実践が進められてきました。一方、自治体間での子ども参加の実践には差が見られます。

セーブ・ザ・チルドレンでは、こうした動きを踏まえ、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」の後援を得て、子ども参加の現在と課題をテーマとした勉強会を、202524日に開催しました。今回の勉強会には、54の自治体から、60人の行政職員や地方議員の参加がありました。




当日は、セーブ・ザ・チルドレンアドボカシー部長 堀江由美子の冒頭あいさつに続き、子どもの権利条約ネットワーク代表・早稲田大学名誉教授の喜多明人氏より、講演「子どもの意見表明・参加の権利をめぐる課題と展望」、一般社団法人TOKYO PLAYの大野さゆり氏より、「自治体の子ども参加の取り組み事例とTOKYO PLAYが大切にしていること」について講演がありました。

 

その後、セーブ・ザ・チルドレン国内事業部国内政策提言チーム 武田望より、「安心・安全な子ども参加のための実践事例集」の紹介を行い、参加した自治体職員・地方議員がグループに分かれてディスカッションを行い、最後に講師への質疑応答を行いました。

 

講演内容要約

 

子どもの権利条約ネットワーク代表・早稲田大学名誉教授 喜多明人氏

喜多氏からは、「子どもの意見表明・参加の権利をめぐる課題と展望」というテーマで、「なぜ子どもの声を反映させる必要があるのか?」「どうしたら子どもの意見を聴くことができるのか?」という点について、これまでの自治体事業での実践や研究データなどを踏まえて話がありました。

まず、こども施策の策定などにおける「子どもの意見反映」の義務化(こども基本法11条など)を踏まえ、全国自治体において、「意見反映格差」、つまり「なぜ子どもの意見を反映させなければならないのか」についての自治体職員間の意識のずれが生じているとの指摘がありました。

次に2024年に子どもの自殺者数が過去最多(527人)となり、自己肯定感の低下を通り越して、今の社会にいること自体に苦痛を感じている子どもが増えていること、また2025年度は出生数が年間70万人を切る見込みであり、15歳未満人口が1,400万人台(総人口比11%台)と、子どもが社会の少数派となっている現状が共有されました。そのようななか、子どもの意見表明・参加の取り組みは、市民サービスの一環として一般市民の声を聴くということ以上に、子どもたちが今の社会にいることの肯定・自身の存在理由になるような取り組みであり、今の危機的な子どもの状況に対して自覚的に取り組むということと、意見表明・参加を保障することの繋がりを、自治体職員に押さえてもらいたいとの話がありました。

加えて、子どもの意見を聴く方法については、「子ども政策は子どもにとっての二次的な関心である」ため、子どものいる場所に、子どもの意見を受け止める経験がある支援団体の大人が出向いて意見を聴くことが重要だとの指摘がありました。子どもには意見表明をする力はあり、ないのは表明する場で、特に継続的な経験と成功体験が重要であるため、対面で子どもが安心して意見を言える機会・場・環境づくりが重要とのポイントが示されました。

 

一般社団法人TOKYOPLAY 大野さゆり氏

続いて、TOKYO PLAYの大野氏からは、「自治体の子ども参加の取組事例とTOKYO PLAYが大切にしていること」をテーマに、困難を抱えた子ども時代の経験、またTOKYOPLAYとして委託を受けている、東京都の小中高生の声を聴き都政に届ける事業の内容と、子どもの声を聴く上で大切にしていることについて、話がありました。

まず、大野氏自身、周囲から気づかれない機能不全家族で育った経験や、学校での「吹きこぼれ」の経験などがあることを共有した上で、そのような経験が、TOKYO PLAYで東京都の小中高生の声を聴き都政に届ける活動や、インクルーシブな遊び場づくりなど、子どもたちの声を聴く仕事をするうえでとても重要なっていることが共有されました。

東京都の委託事業として行った子どもの居場所におけるヒアリングでは、児童館・ユースセンター・プレーパークのように誰もが来られる場所から、学童・子ども食堂・学習支援拠点のようにある程度利用者が決まっている場所、更に放課後等デイサービス・児童養護施設・日本語教室のような困難を抱える子どもがいそうなところなど、出向く形でヒアリングを実施して、540人に声を聴いたとの紹介がありました。その際大切にしていたのは、受け入れる施設の大人が安心して本音を話せるような環境でなければ、そこに来た子どもが本音を言うことは難しいことから、ヒアリング先と丁寧に連絡を取り合い、趣旨に賛同してくれる施設のみにヒアリングを受けてもらうという形を取ったということでした。また、「あなたにとっての聴いてもらったは、どんなものですか?」との問いかけが大野氏から参加者に対してあり、ヒアリングの際、言葉で聴きださなければと躍起になってしまうが、ただ横にいて聴いてもらう経験が大切なのではないかとの指摘がありました。

そのうえで、TOKYO PLAYとして大切にしていることは、子どもにとってのエンパワーメントにつなげること、つまり大人が聴きたいことを聴く以上に、子どもが表現したいことを受け止めること、仲介者として必要な翻訳を行うこと、そして子どもが自分らしく過ごせる場での経験を持つスタッフを配置することとの紹介がありました。

 

セーブ・ザ・チルドレン「安心・安全な子ども参加のための実践事例集」の紹介

セーブ・ザ・チルドレン武田から、参加者への事前アンケートの結果報告と「安心・安全な子ども参加のための実践事例集」の紹介を行いました。


まず、今回の勉強会の事前アンケート結果から、子ども参加の取り組みを何らかの形で行っている自治体が85%、行っていない自治体が15%でした。20238月に実施した自治体勉強会の事前アンケートでも同じ質問を行った際には、行っていると回答した自治体の割合は54%であり、回答者は本勉強会への参加者に限られるものの、何らかの形で子ども参加に取り組む自治体は増えていることがわかりました。


また、子ども参加について感じている課題は主に3つで、子どもの参加者が集まらない、庁内の連携・意識醸成の難しさ、そして意見をどのように聴くかの聴取方法と、実質的な反映についての課題があげられました。



続いて、「安心・安全な子ども参加のための実践事例集」の内容紹介として、まず子ども参加の場において、子どもたちが一人の人間として「自分が大切にされていない」と感じるような状況、または不安を感じながらも周りにそのことを伝えづらいというような状況が起こらないよう、子どもが自由、かつ主体的に意見を表明できるよう、子どもの権利に根差した「安心・安全」な子ども参加を行うことが重要であることについて説明を行いました。そのうえで、上記の3つの課題に対して、対策となるような事例を、事例集の中から紹介しました。

 

グループディスカッションでは、3つの課題について、各自治体でどのような取り組みを行っているか、どのような課題感を持っているかについて、参加者間で話し合いました。その後の質疑応答では、子どもの意見を聴いても、予算や業務の制約上の問題ですべての要望を聞くことが難しい場合の子どもへのフィードバック方法について質問が出され、子どもたちから意見を聴いた際に、実現できないものへの説明責任を果たすことは意見を聴く側が自覚的に捉える必要がある、そして子どもの声を受け止めた上で実現が難しい事項については率直に伝える、また要望についてもう少し詳しく聴いてみると子どもの真意がわかることもある、といった議論がなされました。


 

勉強会実施後のアンケートにおいては、「掲題について、現場を良く知る立場の方からの貴重な意見を知ることができた」、「声を聴くだけでなく、その後のフィードバックの大切さを再確認した。子どもの自殺率の高さに触れた上で、喜多先生の『子どもたちが今の社会に生きる、存在理由になるような取り組み』という言葉が印象的だった」、「意見は言葉だけではなく、態度なども含めたこどもの表現するものすべてが含まれるということを改めて認識した。また、同じ言葉でも、その言葉を発する背景に何があるかによって、持つ意味は変わってくるということを知り、寄り添う姿勢が大切だと感じた」といった声や、「意見表明の際、使われる表現の背景にどういったニーズがあるのか見極めることが大切だということ、そうした見極めができるアドボケイト的な人材(子どもの声を聴き、その声を伝えることをサポートする役割)を増やすことが大切というところに、子どもの声を聴く難しさの本質と具体的な対策が示され勉強になりました」、「どの自治体も子どもの参加数を増やすのに苦労されていることや、教育委員会との連携が課題となっていることがわかった」といった共通の課題や困難も伺えました。

また、子ども参加を推進する上での課題については、「こどもの声を聴く専門人材、人材育成の研修、財政支援など」、「こども会議を常設するため、こどもの意見を反映するためなど、こどもの意見表明機会などの予算が少ない。まずは庁内の意識変革が必要」、「行政が子どもの権利を理解するための研修、そのための予算」など、共通して子どもの声を聴く人材や研修の不足とそのための財政支援、庁内意識改革が挙げられました。

 

こども基本法施行、そして子ども施策の策定などにおける「子どもの意見反映」の義務化からもうすぐ2年が経つ中で、今回の勉強を通して改めて子どもの声を聴く人材や財政支援の不足と、国による支援の必要性が浮き彫りになりました。セーブ・ザ・チルドレンは、国に対してさらなる情報提供や人的・財政支援に関する提言を行っていくと同時に、自治体に対しても引き続き、情報提供や意見交換の場づくりを含め、働きかけを行っていきたいと考えています。 

 

【お問い合わせ】

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 国内事業部(担当:山内、武田)

メールアドレス:japan.advocacy@savethechildren.org

TEL:03-6859-0015 FAX:03-6859-0069 (平日9:3018:00

 


 

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