アドボカシー(公開日:2025.03.22)
【調査報告】子どもの約7割が 「国際協力を進めるべきだ」と回答―国際協力に関する意識調査より
セーブ・ザ・チルドレンは、2025年3月、子どもを含む市民が国際協力に対してどのような意識を持っているかを明らかにするために「国際協力に関する意識調査」を実施しました。これは2023年1月に実施した調査の継続調査となり、市民の意識がどのように変化しているかを把握することを目的としています。アンケート結果がまとまりましたのでご報告します。
対象:47都道府県在住の、1)15歳〜17歳の子ども、2)18歳以上の大人
実施期間:2025年2月28日(金)〜3月2日(日)
方法:インターネットリサーチ「Quick」※調査委託先:株式会社マクロミル
有効回答数:2万606人
(内訳)15歳〜17歳の子ども2,061人、18歳以上の大人1万8,545人
調査主体:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
【国際協力を「進めるべき」と答えた人は約半数、子どもは約7割】
「日本はこれからの国際協力についてどのようにしたらよいと思いますか」という質問に対し、「積極的に進めるべきだ」(16.7%)と「ある程度進めるべきだ」(33.1%)を合わせると49.8%となり、進めるべきだと回答した人は全体の約半数に上りました。一方、「減らすべきだ」(9.1%)、「やめるべきだ」(2.3%)と回答した人は合わせると11.4%で、約1割にとどまっています。
同質問に対する子どもの回答を見ると「積極的に進めるべきだ」(29.7%)、「ある程度進めるべきだ」(38.4%)と回答した子どもは68.1%、つまり約7割の子どもが国際協力を進めるべきと考えていることが明らかになりました。
【ODAに関する国際的な目標の達成は、約4割が支持、子どもは約6割】
日本政府および政府機関が公的な資金を使って実施する国際協力活動は、主にODA(Official Development Assistance、政府開発援助)と呼ばれます。ODAの額は、国民総所得(GNI)の0.7%とすることが国際目標として設定されていますが、2023年時点で、日本が拠出した金額は、GNI比で0.44%[1]となっています。
「日本はODAの拠出金額を国民総所得(GNI)の0.7%にするという国際目標を達成すべきだと思いますか」という質問では、「とてもそう思う」(10.1%)、「ややそう思う」(27.5%)を合わせると約37.6%となり、約4割の人が0.7%目標達成を支持していることがわかりました。
同質問の回答を、子どもと大人別に見ると、「とてもそう思う」(8.8%)、「ややそう思う」(26.4%)と回答した大人の割合は、約3.5割にとどまりましたが、一方、「とてもそう思う」(21.7%)、「ややそう思う」(37.4%)と回答した子どもの割合は約6割となり、大人を上回る結果となりました。
【目的、原則、対象国〜「平和と安定のために、人権に負の影響を与えず、最も貧しい国に対して行う】
国際協力に対する意識として、目的(なぜ必要か)、原則(守らなければいけないこと)、重点国(どのような国を対象にすべきか)についても尋ねました。目的については、「国際社会の平和と安定のため」が52.5%となり、半数を超えました(複数選択)。
原則については、「基本的人権や民主主義に負の影響を与えないこと」が48.8%で約半数となりました(複数選択)。原則についての単一選択では、「武器供与など軍事的な支援を行わないこと」が1位となりました。
また、重点とすべき国は1位から3位を選んでもらったところ、「経済的に貧しい国、貧困・格差が深刻な国」が1位から3位の合計では挙げた人が最も多かった一方で、1位に挙げる人が最も多かったのは「日本の安全保障を確保する上で重要な友好国」という結果になりました。
【重点分野としては、教育・保健医療などの社会サービス分野がトップ、続いて人道支援】
「日本が国際協力を行うときに、どの分野に重点をおくべきだと思いますか(複数回答)」という質問では、55.6%の人が、「教育(学校や教員等)、保健医療(制度や人材育成等)などの社会サービス分野の支援活動」と回答しました。次に、「紛争や災害などの緊急時に行う人道支援活動」が44.5%と続きました。社会サービス分野で特に重点とすべき項目については水・衛生(32.6%)が約3割とトップ、保健・栄養(23.8%)、教育(15.5%)が続きました。
【約6割が気候変動・地球温暖化を自分たちの課題としてとらえている】
今回新たな設問として、「日本にいる自分たちの課題でもある」と感じる世界的な課題について(最大3つまで)聞いたところ、全体の約6割が「気候変動・地球温暖化」、約半数が「食料危機」を自分たちの課題としてとらえていることがわかりました。子どもの回答を見ると、全体と同様、約6割が「気候変動・地球温暖化」を挙げ、約半数が「環境破壊・生物多様性の減少」を挙げました。
2023年の調査と比較すると、国際協力を進めるべきだという大人の割合、子どもの割合、またODA0.7%目標達成を支持する大人の割合、子どもの割合はそれぞれわずかに減少しましたが、子どもは引き続き約7割が国際協力を支持し、約6割がODAの国際目標達成を支持していることが明らかとなりました。また、目的、原則、対象国、そして重点を置くべき分野についても、大きな変化は見られませんでした。
日本は、これまで資金拠出や技術的支援を通じて国際協力に貢献してきました。特に最貧国や脆弱国においては、人々の命と生活を守るために欠かせない重要な支援を提供してきた実績があります。昨今、他の主要な援助国が国際協力に関する方針を転換し、ODA削減の傾向が広がっている中で、日本はさらなるリーダーシップを発揮し、支援を維持・強化していくことが期待されています。一方で、国内にも解決すべき課題は多く、そちらを優先すべきだという声も上がっています。日本は子どもを含む市民の声に広く耳を傾け、その声を政策に反映すると共に、不確実性が増す世界情勢の中、国際社会の平和と安定へのさらなる貢献が求められています。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後も日本が国際協力を積極的に推進し、最も脆弱性の高い国や地域の子どもたちの権利の実現に貢献するよう、働きかけを行っていきます。
[1] 2023年版開発協力白書図表よりhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100657384.pdf