アドボカシー(公開日:2025.12.11)
【12月12日はユニバーサル・ヘルス・カバレッジデー】 全ての人が、経済的な負担なく、安心して保健医療サービスを受けられるために
12月12日はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal HealthCoverage)デーです。UHCとは、誰もが、どこにいても、お金に困ることなく、必要な時に質の高い保健医療サービスを利用できる状態を言います。UHCは、2005年に世界保健機関(WHO)によって初めて提唱され、2012年12月12日の国連総会で、世界の国々が国際社会の共通目標とすることに合意したことで、毎年12月12日が「UHCデー」として定められました[1]。
今年のUHCデーのテーマは、「高すぎる医療費?もううんざり!(Unaffordable Health Cost? WE’RE SICK OF IT!)」です。高額な医療費の自己負担が人々に及ぼす甚大な影響を訴え、政策決定者に対し、UHCの達成を最優先課題とするよう呼びかけています[2]。
WHOの推計によると、いまだに世界人口の半数である約45億人が、基本的な保健医療サービスを受けられていません。また、約20億人が医療関連の支出によって経済的困難に直面しており、そのうち13億人は医療費が原因で貧困に陥っています。さらに、極度の貧困状態にある人々は約3億4,400万人に上ります[3]。
自己負担医療費(Out-of-Pocket expenditure (OOP))が家計支出の10%を超える場合、それは「壊滅的支出」と定義されますが、壊滅的支出を経験しているのは、世界人口の約14%に達しています[4]。より脆弱な立場におかれた低所得世帯にとっては、特に深刻な影響を及ぼすことがあります。
例えば、高額な医療費を支払うことができなければ、必要な保健医療サービスを受けることを諦めざるを得ず、予防可能な病気の治療が遅れ、症状が悪化することがあります。また、医療費が家計を圧迫すると、食料や水などの必需品が購入できなくなったり、子どもの養育費が支払えなくなったりと、基本的ニーズを満たすことが困難になります。
UHC達成のためには、支払い能力が限られ、最も医療を必要とする人々の自己負担を最低限にしたり、免除、撤廃したりする政策が必要であるとともに、全ての人が支払可能な金額で保健医療サービスを受けられる仕組みを整えることも重要です。そのために、各国政府は、健康保険制度の整備などを通じて、公的な補助を増やす必要があります。しかし、各国内で一年間に保健医療サービスを提供するためにかかる総保健医療支出のうち、患者の自己負担によってまかなわれる割合の世界平均は17.2%であり[5]、家計の経済的負担が大きいことが分かっています。
セーブ・ザ・チルドレンは、各国が責任を持って保健予算を増やし、医療費の公的な補助を増やしていくよう働きかけを行うとともに、より脆弱な立場におかれた子どもたちとその家族が、少しでも安心して保健医療サービスを受けることができるように、経済的な負担を減らすためのさまざな取り組みを行っています。
医療を受ける側の支援:マダガスカルでの農家支援活動
セーブ・ザ・チルドレンでは、アフリカ・マダガスカル南東部において、子どもの栄養改善を目的とした農家支援を行っています。
マダガスカルは、国の一年間の保健医療支出のうち約32.3%が患者の自己負担でまかなわれていますが[6]、これは世界の平均を10%以上上回っており、UHCの達成に向けた取り組みが必要とされている国や地域の一つとなっています。
農家を支援することで、農家の子どもたちが栄養価の高い食事をとれるようになり、栄養状態が改善し、医療を必要とする機会も減少します。さらに、農作物を販売して現金収入を得ることで、医療費に充てることもできるようになります。
さらに、農家のグループを作り、VSLA(村貯蓄貸付組合:Village Saving and Loan Association)を運営する支援も行っています。VSLAとは、複数の農家が少額を毎月組合に貯金し、資金が必要になったときに、借りることができる仕組みです。資金を返済する際には、少額の利子とともに返済することで、運用していくことが可能になります。
マダガスカルのVSLAグループの活動
VSLAから借りた資金を、医療施設への交通費や入院時の食事代に充てている農家も複数います。マダガスカルの農村部にある基本的な保健医療サービスは低額ですが、医療施設に行くまでに船や乗り合いバスに何時間も乗らなければならないことや、入院する必要がある際には、付き添いの家族も含めて、食事代が大きな負担となります。稼ぎ手が不在となる場合には、さらに家計への負担は大きく、医療施設に行くこと自体をあきらめてしまう人も少なくありません。このような場合に、VSLAがあることで、適切な保健医療サービスを受けられるようになります。
私たちの事業では、8つの村でVSLAを支援しています。VSLAを活用して、医療サービスだけでなく、教育費などにも充てる家庭もあり、子どもの健全な成長に大きく貢献しています。
医療を提供する側の支援:ルワンダでの看護師クリニックの運営支援
ルワンダでは、キレへ県とキクキロ県において、看護師クリニックの運営を支援しています。
(詳細な活動ブログはこちら)
ルワンダ政府はMutuelle de Santé(コミュニティベース健康保険、CBHI)を導入しています。ルワンダの一年間の保健医療支出のうち、患者の自己負担率は約9.6% [7]と、世界の平均を下回っており、これはUHC達成に向けた取り組みの成功例として知られています。
一方、ルワンダ政府により、地域保健医療サービスの拠点であるヘルスポストの新規設置が進められていますが、設置地域に偏りがあり、特に農村部での設置は進んでいません。また、ルワンダは近隣国から多くの避難民を受け入れており、2025年時点で約13万人の難民がルワンダ国内の避難民キャンプなどで生活をしていますが[8]、難民キャンプ周辺のヘルスポストは混雑しており、適切なタイミングで保健医療サービスを受けられないなどの課題があります。
こうした課題を解決するため、セーブ・ザ・チルドレンは2023年から、低コスト・プライベートクリニック事業を開始しました。このクリニックでは、医師でなく看護師が保健医療サービスの提供およびクリニック運営を担い、オンライン診療も活用しています。また、2025年6月からCBHIの認証を受けたことで、患者の自己負担額は大幅に減少し、より低コストでサービスを提供することができます。
キクキロ県カモニクリニック
クリニックが開業したことにより、ヘルスポストの混雑緩和にもつながり、地域全体でより多くの人々に迅速に保健医療サービスを届けられるようにもなりました。
クリニックを運営する看護師は、診察料などの収入でクリニックの開業にかかった費用をセーブ・ザ・チルドレンに返済していきます。数年後には、返済が完了し、収益が黒字化することで、自身の収入で運営を継続することができます。私たちに返済された費用は新たなクリニックの開業資金に充てることにより、資金が循環していく仕組みとなっています。
クリニックのスタッフ
セーブ・ザ・チルドレンでは、このようなクリニックをルワンダ全土で拡大していく計画を立てており、さらなるUHCへの貢献を目指しています。
保健医療サービスを受ける権利は、基本的人権の一つです。セーブ・ザ・チルドレンは、誰一人取り残されることなく、全ての子どもたちの健康への権利が守られるよう、UHCに向けた取り組みをこれからも続けていきます。
[1]公益財団法人ジョイセフ(2025)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジデー
https://uhcday.jp/about/about_uhc/
[2] Universal Health Coverage Day (2025)
https://www.universalhealthcoverageday.org/
[3], [4] WHO (2023) Billions left behind on the path to universal health coverage
[5] WHOデータベース (2025) Out-of-pocket expenditure as percentage of current health expenditure (CHE) (%) https://data.worldbank.org/indicator/SH.XPD.OOPC.CH.ZS
[6] WHOデータベース (2025) Out-of-pocket expenditure as percentage of current health expenditure (CHE) (%)-Madagascar
https://data.worldbank.org/indicator/SH.XPD.OOPC.CH.ZS?locations=MG
[7] WHOデータベース (2025) Out-of-pocket expenditure as percentage of current health expenditure (CHE) (%)-Rwanda
https://data.worldbank.org/indicator/SH.XPD.OOPC.CH.ZS?locations=RW
[8] UNHCR (2025) Operational Data Portal Rwanda
https://data.unhcr.org/en/country/rwa



