ウガンダ(公開日:2025.11.17)
【ウガンダ・子どもの保護】
地域と人の力で子どもを守る―3年目に見え始めた成果
ウガンダ北西部のアルア県とアルア市では、行政や地域の人々が力を合わせ、子どもたちを暴力や虐待から守る取り組みが進んでいます。セーブ・ザ・チルドレンは、その輪の中で、地域の力を生かしながら行政とともに「子どもの保護の仕組み」づくりを支えています。現在、事業は3年目を迎え、これまでの積み重ねが少しずつ地域の変化として現れ始めています。
■子どもの保護の最前線――地域の目と耳となり活躍するパラ・ソーシャルワーカー
地域の子どもや家庭に最も近い存在として活動しているのが、パラ・ソーシャルワーカーです。村ごとに配置された彼らは、家庭や地域での虐待やネグレクトの兆候をいち早く見つけ、行政と連携して子どもを支援する大切な役割を担っています。
実際に、直近(2025年7〜10月)にアルア県とアルア市で報告された、子どもへの暴力やネグレクトなど、子ども保護に関する157件のケースのうち、半数を超える83件がパラ・ソーシャルワーカーによって特定されました。
これは、地域の中でいち早く子どもの異変に気づき、支援につなげる彼らの存在が、子どもの保護システム最前線において“目と耳”として欠かせないことを示しています。
3年目事業では、これまで研修を受けてきたパラ・ソーシャルワーカーを対象にリフレッシャー研修(再研修)を実施しました。研修では、子ども一人ひとりの状況に合わせて支援を行う「ケースマネジメント」の6つのステップ(特定・評価・計画・実施・モニタリング・終結)を改めて確認し、実践力を高めました。(ケースマネジメントについて分かりやすく解説した記事はこちら【子どもの保護コラム】ケースマネジメントとは?―子ども一人ひとりに合わせた支援のかたち―)
「研修を通して、子どもをどう支えたらよいかをより深く理解できました。今では、問題を早く見つけて、社会福祉オフィサー[1] と一緒に対応できるようになりました。」
――アルア県パラ・ソーシャルワーカー
2年目の調査によると、パラ・ソーシャルワーカーの91%が「ケース対応に自信を持てるようになった」と回答しました。支援スキルも大きく向上し、ガイドラインに則ったケース対応の適切性は67%(1年目)から98%(2年目)へと改善しました。
■地域の信頼関係を基盤に広がる暴力防止啓発と子育て支援
地域住民への啓発活動も進んでおり、これまでにアルア県とアルア市での活動を通じて、1万600人以上が暴力の予防やジェンダー平等について学んでいます。2年目の調査では、住民の7割が「虐待を見かけたら誰に連絡すればよいか知っている」と答え、99%が「パラ・ソーシャルワーカーの活動が児童婚や児童労働の予防に役立っている」と感じています。
地域の中で、パラ・ソーシャルワーカーは「子どもの保護について相談できる一番身近な存在」として確かな信頼を得ています。こうした信頼関係を基盤に、彼らは地域のメンター的存在として「体罰等によらない子育て研修」も実施しています。
地域に根差したパラ・ソーシャルワーカーだからこそ、現地の言葉と文化に合わせた分かりやすい方法で、養育者や子どもたちに暴力に頼らない子育てを伝えることができます。子育てや家庭といったセンシティブな話題でも、彼らには安心して悩みを打ち明けられると感じる家庭が多く、積極的に研修に参加する世帯が増えています。
このように、地域の人々自身が主体となって支え合う姿は、外部の支援者では難しい「地域に根差した支援」の実現につながっています。開発支援の枠組みのもと、継続的な研修や地域に根差した仕組みづくりを通じて、地域の人々が自らの手で取り組みを続けることができています。これは、「支援の現地化(ローカライゼーション)」の理想を体現しています。
■人の力で支える広域の安心拠点――子どもを守り、相談を受け止める一時保護所
事業1年目にアルア市警察内に設置された「一時保護所」では、家庭内暴力や性的虐待、ネグレクトなど危険な状況にある子どもたちを一時的に保護しています。開設から1年3ヶ月で167人の子どもを保護し、1,206人の相談に対応しました。
ここでは、専門スタッフによる心理社会的支援(カウンセリングセッションなど)や、家族との関係を取り戻すための対話支援(メディエーション)、医療・司法機関への紹介など、ケースに応じた支援が行われています。
「一時保護所の設置によって、警察、パラ・ソーシャルワーカー、社会福祉オフィサー、そして保護担当官との連携が改善されました。今では、ケースがより安全で秘密が守られた環境で扱われ、子どもたちは迅速に支援を受けられるようになっています。」
――アルア市 社会福祉オフィサー
この施設は、隣接する県からも子どもが一時保護のために搬送されるなど、広域的な役割も果たしています。団体間での調整の成果として、他団体からテレビや衛生用品などが追加提供され、子どもの保護を支える協働体制が地域レベルで強化されています。3年目事業では、カウンセリングルームやキッチンを増設し、子どもたちが心身ともに安心できる空間をさらに整えていく予定です。
■行政とともに――持続可能な仕組みづくりへ
地域と行政が力を合わせて子どもを守る意識が、少しずつ根付き始めています。 アルア市では子どもの保護を担当する保護担当室への追加予算を確保するなど、これまでの事業の成果と政策提言の効果によって具体的な変化が生まれています。
ジェンダー労働社会開発省との合同モニタリングでは、国家ガイドラインに沿ったケースマネジメントが実践されているかを確認しています。さらに、パラ・ソーシャルワーカーの能力評価基準を整備し、活動を継続的に支える仕組みづくりも進んでいます。
デジタル化も少しずつ進めています。社会福祉オフィサーにタブレット端末を供与し、これまでに300件以上のケースデータがオンラインで管理できるようになりました。国家レベルで開発されている子どもの保護の情報管理システムも、事業3年目にはアルア県・市への導入が予定されています。地方と中央が連携し、子どもを守る持続的な制度基盤を構築しています。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの保護の仕組みを強化する取り組みが、アルア県・アルア市のみならず、ウガンダの他の地域、そしてより多くの子どもたちへと広がっていくことを目指し、引き続き活動を実施していきます。
本事業は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」によるご支援と、個人・法人の多くの皆さまからのご寄付により実施しています。
海外事業部 ウガンダ駐在員 内藤 優和
[1]アルア県およびアルア市に採用した子どもの保護専門の社会福祉人材。パラ・ソーシャルワーカーと協働してケースマネジメントを実施し、彼らへの助言・指導も行う。
■子どもの保護の最前線――地域の目と耳となり活躍するパラ・ソーシャルワーカー
地域の子どもや家庭に最も近い存在として活動しているのが、パラ・ソーシャルワーカーです。村ごとに配置された彼らは、家庭や地域での虐待やネグレクトの兆候をいち早く見つけ、行政と連携して子どもを支援する大切な役割を担っています。
実際に、直近(2025年7〜10月)にアルア県とアルア市で報告された、子どもへの暴力やネグレクトなど、子ども保護に関する157件のケースのうち、半数を超える83件がパラ・ソーシャルワーカーによって特定されました。
これは、地域の中でいち早く子どもの異変に気づき、支援につなげる彼らの存在が、子どもの保護システム最前線において“目と耳”として欠かせないことを示しています。
3年目事業では、これまで研修を受けてきたパラ・ソーシャルワーカーを対象にリフレッシャー研修(再研修)を実施しました。研修では、子ども一人ひとりの状況に合わせて支援を行う「ケースマネジメント」の6つのステップ(特定・評価・計画・実施・モニタリング・終結)を改めて確認し、実践力を高めました。(ケースマネジメントについて分かりやすく解説した記事はこちら【子どもの保護コラム】ケースマネジメントとは?―子ども一人ひとりに合わせた支援のかたち―)
「研修を通して、子どもをどう支えたらよいかをより深く理解できました。今では、問題を早く見つけて、社会福祉オフィサー[1] と一緒に対応できるようになりました。」
――アルア県パラ・ソーシャルワーカー
2年目の調査によると、パラ・ソーシャルワーカーの91%が「ケース対応に自信を持てるようになった」と回答しました。支援スキルも大きく向上し、ガイドラインに則ったケース対応の適切性は67%(1年目)から98%(2年目)へと改善しました。
■地域の信頼関係を基盤に広がる暴力防止啓発と子育て支援
地域住民への啓発活動も進んでおり、これまでにアルア県とアルア市での活動を通じて、1万600人以上が暴力の予防やジェンダー平等について学んでいます。2年目の調査では、住民の7割が「虐待を見かけたら誰に連絡すればよいか知っている」と答え、99%が「パラ・ソーシャルワーカーの活動が児童婚や児童労働の予防に役立っている」と感じています。
地域の中で、パラ・ソーシャルワーカーは「子どもの保護について相談できる一番身近な存在」として確かな信頼を得ています。こうした信頼関係を基盤に、彼らは地域のメンター的存在として「体罰等によらない子育て研修」も実施しています。
地域に根差したパラ・ソーシャルワーカーだからこそ、現地の言葉と文化に合わせた分かりやすい方法で、養育者や子どもたちに暴力に頼らない子育てを伝えることができます。子育てや家庭といったセンシティブな話題でも、彼らには安心して悩みを打ち明けられると感じる家庭が多く、積極的に研修に参加する世帯が増えています。
このように、地域の人々自身が主体となって支え合う姿は、外部の支援者では難しい「地域に根差した支援」の実現につながっています。開発支援の枠組みのもと、継続的な研修や地域に根差した仕組みづくりを通じて、地域の人々が自らの手で取り組みを続けることができています。これは、「支援の現地化(ローカライゼーション)」の理想を体現しています。
■人の力で支える広域の安心拠点――子どもを守り、相談を受け止める一時保護所
事業1年目にアルア市警察内に設置された「一時保護所」では、家庭内暴力や性的虐待、ネグレクトなど危険な状況にある子どもたちを一時的に保護しています。開設から1年3ヶ月で167人の子どもを保護し、1,206人の相談に対応しました。
ここでは、専門スタッフによる心理社会的支援(カウンセリングセッションなど)や、家族との関係を取り戻すための対話支援(メディエーション)、医療・司法機関への紹介など、ケースに応じた支援が行われています。
「一時保護所の設置によって、警察、パラ・ソーシャルワーカー、社会福祉オフィサー、そして保護担当官との連携が改善されました。今では、ケースがより安全で秘密が守られた環境で扱われ、子どもたちは迅速に支援を受けられるようになっています。」
――アルア市 社会福祉オフィサー
この施設は、隣接する県からも子どもが一時保護のために搬送されるなど、広域的な役割も果たしています。団体間での調整の成果として、他団体からテレビや衛生用品などが追加提供され、子どもの保護を支える協働体制が地域レベルで強化されています。3年目事業では、カウンセリングルームやキッチンを増設し、子どもたちが心身ともに安心できる空間をさらに整えていく予定です。
■行政とともに――持続可能な仕組みづくりへ
地域と行政が力を合わせて子どもを守る意識が、少しずつ根付き始めています。 アルア市では子どもの保護を担当する保護担当室への追加予算を確保するなど、これまでの事業の成果と政策提言の効果によって具体的な変化が生まれています。
ジェンダー労働社会開発省との合同モニタリングでは、国家ガイドラインに沿ったケースマネジメントが実践されているかを確認しています。さらに、パラ・ソーシャルワーカーの能力評価基準を整備し、活動を継続的に支える仕組みづくりも進んでいます。
デジタル化も少しずつ進めています。社会福祉オフィサーにタブレット端末を供与し、これまでに300件以上のケースデータがオンラインで管理できるようになりました。国家レベルで開発されている子どもの保護の情報管理システムも、事業3年目にはアルア県・市への導入が予定されています。地方と中央が連携し、子どもを守る持続的な制度基盤を構築しています。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの保護の仕組みを強化する取り組みが、アルア県・アルア市のみならず、ウガンダの他の地域、そしてより多くの子どもたちへと広がっていくことを目指し、引き続き活動を実施していきます。
本事業は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」によるご支援と、個人・法人の多くの皆さまからのご寄付により実施しています。
海外事業部 ウガンダ駐在員 内藤 優和
[1]アルア県およびアルア市に採用した子どもの保護専門の社会福祉人材。パラ・ソーシャルワーカーと協働してケースマネジメントを実施し、彼らへの助言・指導も行う。




