日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2025.03.24)
「実体験はこころと体に刻まれる重さが違うと実感しました」―子ども体験プログラム参加者の保護者の声―
今、子どもの貧困問題の一つとして、子どもの体験格差が社会的な課題となっています。
セーブ・ザ・チルドレンとつながる経済的に困難な状況にある子どもや保護者からも、部活や習い事、修学旅行や家族旅行、キャンプや芸術鑑賞といった体験が経済的に難しいといった声が聴かれていました。
このような背景からセーブ・ザ・チルドレンでは、経済的に困難な状況にある子どもたちの体験の機会を保障するため、2022年から夏休み期間や週末に「子ども体験プログラム」を実施しています。
2024年には、「恐竜プラモデル教室」「街ツアー&アート探検ツアー」「野外活動体験」「職業フェア」の4つのプログラムを実施しました。(詳しくはこちら)
今回、2024年に実施した「街ツアー&アート探検ツアー」に参加した中学3年生の子どもの保護者にインタビューを行いました。

Q.プログラムに参加した後のお子さんの様子はどうでしたか。
もともと美術が好きなのですが、それを再確認するきっかけになったみたいです。
絵をよく描くのですが、経済的な理由でなかなか美術館には行けず、また、SNSなどを見ると自分より上手な子がたくさんいて絵を書く意欲や自信をなくしていたようです。母親である私がほめても、「それはお母さんだから」という感じで。でも今回プログラムに参加して美術館に行ってみて、周りの評価は関係なく、やっぱり自分は美術が好きなんだということ、他にも自分は何が好きで何が嫌いなのか、何が向いていて何が向いていないかなどの自分の興味や将来について自分主体で考えるきっかけになったようです。インターネットでみる情報と実体験は、こころと体に刻まれる重さが全く違うと実感しました。
また、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフや企業の人たちに接して、学校でも家庭でもない、普段なかなか会えない新しい大人とのかかわりが持てたことで、体験を支えて一緒に明るくニコニコ楽しんでくれる大人がいるということに驚いていました。いろいろな大人がいて多様な価値観をもっているんだということにも気づいたようです。
Q.今回の体験プログラム以外では、他にはどんな体験があるとよいと思いますか。
食に関する体験ができるとよいなと思います。
新型コロナウイルス感染症による家計の経済状況の悪化や、物価の高騰などで食費を削らざるを得ず、2年前くらいまで年に数回行っていたファストフード店も、今は到底いけません。子どもの友だちがタピオカドリンクを飲んだと話していても子どもは飲んだこともなく味がわからず話についていけません。小さいことかもしれませんが、そうしたことが重なって何もかも諦める連鎖になってしまうのではないかと危惧しています。
自分(保護者)自身もひとり親で食事をあまり作ってもらう機会がなく、お雑煮の味や作り方がわかりません。なので、行事ごとの食事や、地域・世界の郷土料理について学んで食べられるような機会があるとよいと思います。
また、テーマパークなども我が家は行ったことがありません。子どもがSNSで友達がテーマパークに行っているのを見たりするたびに申し訳ない気持ちになりますが、こうした気持ちを言うと、「自己責任」といわれそうで怖くてなかなか言えません。
自治体の子育て支援課にも相談にいったことがありましたが、「お母さんは辛くてもとにかくいつも元気でニコニコしていないと!」と言われてしまい何も相談できなかった経験があります。自分自身もひとり親家庭で育ちましたが、母が一人でがんばって働いて育ててくれただけで、誰も他の人は助けてくれなかった、どうせ誰も助けてくれないという思いがあります。
Q.体験の機会を保障するために国や自治体に求めることはありますか。
とにかく楽しく希望をもって生きていってほしいというのが親の願いなのですが、あらゆる面で金銭的に選択肢が限られてしまっています。それを解消するために仕事をいくつも掛け持ちして働いているのですが、そうすると今度は忙しすぎて子どもと接する時間がなくなります。どちらにしても子どもは我慢する習慣がしみ込んでしまっていると感じます。
私が知らないだけかもしれませんが、さまざまな子ども対象の事業や支援や居場所が中学校卒業でぷつりと切れてしまう気がしています。来年高校生になりますが、中学では貸与されていたタブレットなどは自費で購入しなければいけませんし、給食もないので食費もかさみます。
金銭的な援助が一番ありがたく、児童手当の延長は本当にありがたいのですが、体験プログラムのような、人とかかわりがもてて、勉強もできるいろんな機会や居場所ももっと増やしてもらえたらと思います。
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体験の機会を保障することは、子どもの権利条約に定められた、子どものレクリエーション・文化・スポーツ活動をする権利や休む権利、学ぶ権利などを保障することにつながります。
衣食住が保障されること、学ぶ権利が大切であることはもちろんですが、子どもの頃の多様な体験は、自分を見つめるきっかけになったり、将来に対する選択肢の視野を広げることになったりします。体験の機会を保障することは、子どもの成長にとってとても重要なのです。
セーブ・ザ・チルドレンは、引き続き体験プログラムを実施しつつ、政府や社会に対して、子ども時代の体験の機会の重要性について伝えていきます。
※セーブ・ザ・チルドレンでは体験プログラム以外にも、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで更新しています。ご関心がある方はぜひご覧ください。
(報告 国内事業部 椎名)
セーブ・ザ・チルドレンとつながる経済的に困難な状況にある子どもや保護者からも、部活や習い事、修学旅行や家族旅行、キャンプや芸術鑑賞といった体験が経済的に難しいといった声が聴かれていました。
このような背景からセーブ・ザ・チルドレンでは、経済的に困難な状況にある子どもたちの体験の機会を保障するため、2022年から夏休み期間や週末に「子ども体験プログラム」を実施しています。
2024年には、「恐竜プラモデル教室」「街ツアー&アート探検ツアー」「野外活動体験」「職業フェア」の4つのプログラムを実施しました。(詳しくはこちら)
今回、2024年に実施した「街ツアー&アート探検ツアー」に参加した中学3年生の子どもの保護者にインタビューを行いました。

Q.プログラムに参加した後のお子さんの様子はどうでしたか。
もともと美術が好きなのですが、それを再確認するきっかけになったみたいです。
絵をよく描くのですが、経済的な理由でなかなか美術館には行けず、また、SNSなどを見ると自分より上手な子がたくさんいて絵を書く意欲や自信をなくしていたようです。母親である私がほめても、「それはお母さんだから」という感じで。でも今回プログラムに参加して美術館に行ってみて、周りの評価は関係なく、やっぱり自分は美術が好きなんだということ、他にも自分は何が好きで何が嫌いなのか、何が向いていて何が向いていないかなどの自分の興味や将来について自分主体で考えるきっかけになったようです。インターネットでみる情報と実体験は、こころと体に刻まれる重さが全く違うと実感しました。
また、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフや企業の人たちに接して、学校でも家庭でもない、普段なかなか会えない新しい大人とのかかわりが持てたことで、体験を支えて一緒に明るくニコニコ楽しんでくれる大人がいるということに驚いていました。いろいろな大人がいて多様な価値観をもっているんだということにも気づいたようです。
Q.今回の体験プログラム以外では、他にはどんな体験があるとよいと思いますか。
食に関する体験ができるとよいなと思います。
新型コロナウイルス感染症による家計の経済状況の悪化や、物価の高騰などで食費を削らざるを得ず、2年前くらいまで年に数回行っていたファストフード店も、今は到底いけません。子どもの友だちがタピオカドリンクを飲んだと話していても子どもは飲んだこともなく味がわからず話についていけません。小さいことかもしれませんが、そうしたことが重なって何もかも諦める連鎖になってしまうのではないかと危惧しています。
自分(保護者)自身もひとり親で食事をあまり作ってもらう機会がなく、お雑煮の味や作り方がわかりません。なので、行事ごとの食事や、地域・世界の郷土料理について学んで食べられるような機会があるとよいと思います。
また、テーマパークなども我が家は行ったことがありません。子どもがSNSで友達がテーマパークに行っているのを見たりするたびに申し訳ない気持ちになりますが、こうした気持ちを言うと、「自己責任」といわれそうで怖くてなかなか言えません。
自治体の子育て支援課にも相談にいったことがありましたが、「お母さんは辛くてもとにかくいつも元気でニコニコしていないと!」と言われてしまい何も相談できなかった経験があります。自分自身もひとり親家庭で育ちましたが、母が一人でがんばって働いて育ててくれただけで、誰も他の人は助けてくれなかった、どうせ誰も助けてくれないという思いがあります。
Q.体験の機会を保障するために国や自治体に求めることはありますか。
とにかく楽しく希望をもって生きていってほしいというのが親の願いなのですが、あらゆる面で金銭的に選択肢が限られてしまっています。それを解消するために仕事をいくつも掛け持ちして働いているのですが、そうすると今度は忙しすぎて子どもと接する時間がなくなります。どちらにしても子どもは我慢する習慣がしみ込んでしまっていると感じます。
私が知らないだけかもしれませんが、さまざまな子ども対象の事業や支援や居場所が中学校卒業でぷつりと切れてしまう気がしています。来年高校生になりますが、中学では貸与されていたタブレットなどは自費で購入しなければいけませんし、給食もないので食費もかさみます。
金銭的な援助が一番ありがたく、児童手当の延長は本当にありがたいのですが、体験プログラムのような、人とかかわりがもてて、勉強もできるいろんな機会や居場所ももっと増やしてもらえたらと思います。
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体験の機会を保障することは、子どもの権利条約に定められた、子どものレクリエーション・文化・スポーツ活動をする権利や休む権利、学ぶ権利などを保障することにつながります。
衣食住が保障されること、学ぶ権利が大切であることはもちろんですが、子どもの頃の多様な体験は、自分を見つめるきっかけになったり、将来に対する選択肢の視野を広げることになったりします。体験の機会を保障することは、子どもの成長にとってとても重要なのです。
セーブ・ザ・チルドレンは、引き続き体験プログラムを実施しつつ、政府や社会に対して、子ども時代の体験の機会の重要性について伝えていきます。
※セーブ・ザ・チルドレンでは体験プログラム以外にも、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで更新しています。ご関心がある方はぜひご覧ください。
(報告 国内事業部 椎名)