アドボカシー(公開日:2026.01.06)
【政策概要】『母子の命と健康を守る衡平な保健システムの構築:未来への投資としての日本のコミットメント』を発表
セーブ・ザ・チルドレンは、2025年12月、政策概要『母子の命と健康を守る衡平な保健システムの構築:未来への投資としての日本のコミットメント』を発表しました。
すべての人には、「健康への権利」の一環として、いつでも必要な保健医療サービスを受ける権利があります。しかし、世界人口の約半数が、最低限の必須保健医療サービスにアクセスすることができておらず、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や持続可能な開発目標(SDGs)の達成には程遠い状態です。最も脆弱な立場に置かれた人々の健康格差は深刻で、いまだに年間約480万人の子どもと約26万人の妊産婦が予防できる原因で命を落としています。これは基本的な保健医療サービスさえ受けることができれば、守ることができる命です。
母子の命と健康を守る支援は、コストではなく「未来への投資」です。特に栄養改善や予防接種は、費用対効果の高い公衆衛生介入とされ、疾病予防により医療費や社会的負担を軽減します。性と生殖に関する健康(リプロダクティブヘルス)および母子と青少年の健康と栄養(RMNCAH-N)サービスの充実は、母子や青少年が必要な保健医療を受け、健康な状態で社会・経済活動に参加できる機会を生みます。さらに、健康な子どもは生産性の高い大人に成長し、人的資本の強化と経済発展につながります。
母子の命と健康を守る保健医療サービスには膨大なニーズがあり、資金拡大と予算配分の適正化が急務です。しかし、主要ドナー国の援助方針の転換や援助凍結により国際資金が減少し、グローバルヘルスは深刻な危機に直面しています。保健医療サービスへのアクセスの不平等や健康格差を是正し、持続可能な保健システムを構築するため、国際社会の連帯と資金協力の維持・拡大が不可欠です。
日本政府はこれまで、「人間の安全保障」の理念に基づき、政府開発援助(ODA)を通じて途上国の保健医療サービス拡充に貢献し、多国間支援においても、母子保健や栄養、予防接種率の向上、保健システムの構築などを支援するグローバルヘルス・イニシアティブ(GHIs)への資金拠出を通じて、安定的な資金確保に貢献してきた実績があります。今後、日本のODAがRMNCAH-N分野のさらなる資金調達において重要な役割を果たし、衡平で持続可能な保健システムの構築により一層寄与するよう、効果的かつ効率的な資金活用を実現する戦略の再構築が必要です。また、成果を最大化する視点に立ち、政策目標との整合性を高めた支援のあり方を追求することが重要です。
本政策概要は、日本を含む国際社会が果たすべき役割について、これまでの日本の二国間・多国間援助の成果を可視化し、今後強化すべき領域を特定することを目的としています。その上で、世界の母子や青少年が直面する深刻なギャップを明らかにし、妊産婦や乳幼児の死亡率が依然として高い地域や、基本的な保健・栄養サービスへのアクセスが制限される最も脆弱な立場に置かれた人々の現状に着目しています。
分析には、東北大学の野村周平教授によって開発されたデータベース「Visualizing ODA(VODA)」と経済協力開発機構(OECD)のデータベースである「Creditor Reporting System(CRS)」を使用し、日本のODA全体で保健セクターが占める割合の変遷などを示しました。また、保健セクターのODAの中でも、特に母子保健(リプロダクティブヘルス)分野、栄養分野、感染症対策(予防接種)分野に焦点を当てました。各分野において二国間贈与ベースの援助が占める割合や、後発開発途上国への援助が占める割合、政府の支援が難しい地域やコミュニティへのリーチが可能なNGOを通した援助の割合などを明らかにし、日本のODAがどれほど脆弱性の高い国や地域、脆弱な立場に置かれた人々やコミュニティに寄与するものとなっているかを確認しました。また最後に、今後日本のODAがより効果的に使われ、インパクトを最大化するための8つの提言を、分析結果をもとに導き出しました。

保健セクターODAは新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に増加傾向を見せた
日本のODA全体のうち、保健セクターが占める割合は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック統制のために2020年以降増加傾向にありましたが、母子保健、栄養、感染症対策分野では、いずれも減少していることが明らかになりました。
後発開発途上国への援助の割合が最も大きいことが明らかになった(2020年以降、所得水準による分類が適用されていない国・地域への援助が増加傾向にあるのは、新型コロナウイルス感染症対策のため、国際保健機関を通じたワクチン・治療薬・診断薬の途上国への供給支援などが拡大したことが挙げられる)
日本の保健セクターODAの傾向として、二国間贈与ベースの割合が、他の援助形態と比べると高いことが明らかになりましたが、これは援助受取国にとって債務負担とならない、持続可能な支援として高く評価されるものです。また、保健セクター全体、母子保健、栄養、感染症対策(予防接種)それぞれの分野において、後発開発途上国への支援が他の援助受取国と比較して高くなっており、特に支援の届きにくい脆弱な層の保健医療サービスのアクセス向上に貢献していると言えます。
しかし、NGO を通した支援が減少しており、政府の支援が届きにくい地域や、社会的に疎外された人々や脆弱なコミュニティに対する、より柔軟かつ地域に根ざした支援が必要とされる中、支援のあり方にも転換が求められます。特に、専門性や現場の知見を持つNGOの強みを活かす協力と連携の強化が望まれます。
保健セクターの二国間贈与ベースの援助では、NGO経由の援助額とその割合が減少傾向にある
健康格差を是正し、誰もが必要な時に質の高い保健医療サービスを受けられるようにするには、衡平で持続可能な保健システムの構築が不可欠です。特に、RMNCAH-N 分野は、UHC 達成の基盤であり、この分野への資金配分の優先と規模の拡充が急務です。
分析に基づく8つの提言
セーブ・ザ・チルドレンは、これからもRMNCAH-N 分野の支援拡大に向けた日本政府のコミットメント強化のため、こうしたエビデンスに基づく政策提言を行っていきます。
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