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アドボカシー
(公開日:2026.01.22)

【開催報告】UHCハイレベルフォーラム院内集会「母子の命と健康を守る未来への投資」

 

セーブ・ザ・チルドレンは、2025125日、参議院議員会館特別会議室にて、UHCハイレベルフォーラム院内集会「母子の命と健康を守る未来への投資」を開催しました。13人の国会議員に加え、国際機関、NGO、民間企業、アカデミアなど約50人が参加し、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)達成の基盤としての母子保健の重要性と、資金・知見の両面から持続可能性を高める方策について議論しました。

 


母子保健(RMNCAH-N=性と生殖に関する健康、母子・青少年の健康と栄養)サービスは、費用対効果が高く、母子の命と健康を守るだけでなく、医療費の削減や人的資本の強化を通じて経済発展にも寄与する「未来への投資」となります。

 

126日には、日本政府が世界銀行・世界保健機関(WHO)と共催で「UHCハイレベルフォーラム」を開催し、開発途上国の保健・財政当局の人材育成と能力強化を目的とする「UHCナレッジハブ」を正式に発表しました。この院内集会では、母子保健サービスの持続可能性の重要性と、同ナレッジハブの果たしうる役割について、日本政府、グローバルヘルス・イニシアティブ(GHIs)、市民社会、民間セクター、アカデミア、フィランソロピーなど、多様なステークホルダーが知見を共有しました。

 

まずは、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン専務理事・事務局長の高井明子より開会のあいさつが行われ、開催趣旨が述べられました。

 

続いて、武見敬三元厚生労働大臣(公益財団法人日本国際交流センターシニア・フェロー)より、日本が世界銀行・WHOと協力してUHCナレッジハブを設立し、途上国の保健・財務当局の能力強化と資金配分の効率化を支援する意義が示されました。日本に事務局と合同事務局を創設し、国連組織を誘致した点にも言及のうえ、日本が地政学的な緊張下でも保健分野を通じた平和と安全への制度的かつ戦略的な貢献を行うことの重要性が示されました。

 

また、この院内集会の呼びかけ人である国光文乃衆議院議員からは、脆弱な子どもたちへの投資と保健財政の強化が急務であること、自身がケニアで視察したワクチン接種の現場で確認された取り組みや、紛争における子どもの保護の重要性が語られました。外交支援に加え、ステークホルダーのエコシステム強化とネットワーク構築により、日本の国際保健におけるプレゼンス向上を図るべきとの提言がありました。

 



1部:途上国の現状と市民社会の視点


セーブ・ザ・チルドレンからはケニア カントリー・ディレクター ポーンプン・ジブ・ラビルトサポーンが、主要ドナーによる援助削減がケニアの保健医療に与えた深刻な影響について報告しました。ケニアでは、医療従事者の4万人以上、つまり全体の18%超が対外支援によって支えられていましたが、援助の削減により医療現場の人員不足を招きました。そのことで、医療従事者が提供できるサービスの質や範囲にも大きな影響が生じました。母子保健やSRHR(性と生殖に関する健康と権利)サービスが深刻な影響を受け、遠隔地では栄養支援やワクチンの中断、アウトリーチ型サービスの縮小などにより約60万人が医療を受けられていない現状が示されました。保健情報システムの停止も計画立案を困難にしており、保健医療人材の増員、システム強化、国内資金動員が喫緊の課題であることに言及しました。

 

次に、ワキ・ヘルス エグゼクティブ・ディレクターでUHC2030市民社会参画メカニズム・アドバイザーのローズマリー・ブル氏は、母子保健が一次医療の強さを示す主要指標であること、UHC達成には人間中心のアプローチとグローバルな連帯が不可欠であることを強調しました。また、プライマリーヘルスケアへの投資、コミュニティシステムの強化、デジタル化、ラストマイルへのアウトリーチの重要性、さらに国内資金の効率化と国際協力の組み合わせを提案し、UHCナレッジハブの活用による「誰一人取り残さない医療」の実現を訴えました。




2部:ステークホルダーからのコメント


2部では、まず民間企業とアカデミアの視点から、母子保健への投資の意義と投資効果について報告がありました。

 

公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)CEO・専務理事 國井修氏により、経口補水液(ORS)、マラリア予防の蚊帳、ワクチン、すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)など、民間企業の技術革新によって子どもの死亡率を大きく減らしてきた実績が紹介されました。一方で、小児用治療薬・ワクチンの不足などがいまだに課題であるとして、日本企業のさらなる技術活用と官民連携を促すメカニズムの構築と、インセンティブ設計の重要性を強調しました。

 

シスメックス株式会社事業戦略部シニアプランナー 中村由紀子氏からは、マラリア感染の有無と貧血状態を同時に確認できる全自動血液分析装置XN-31について紹介がありました。 XN-31、従来法に比べ精度・速度に優れ、約1分で検査結果の提供が可能であることが強みです。また、日本企業・財団との連携による母子保健・栄養改善プロジェクトでの活用事例を通して、今後も早期発見・治療のための質の高い検査をより広く展開し、UHC達成へ貢献していきたいとの考えが述べられました。

 

東北大学災害科学国際研究所・グローバルヘルス政策学分野の野村周平教授より、最新の疾病負荷データに基づき、新生児障害が依然として主要な死因の一つであり、その発生には低出生体重や早産といった周産期の不良アウトカムが深く関与し、さらにその背景として母子の栄養不良が重要な役割を果たしていることが示されました。あわせて、UHCの達成に向けては、これら上流から下流に連なる要因に包括的に対応する母子保健および栄養介入を通じた、保健システムの基盤強化が不可欠であることが示されました。

 


続いて、グローバルヘルス・イニシアティブより、母子保健分野の取り組みを促進するGHIsのサポートモデルが示されました。

 

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバル・ファンド)渉外・広報局副局長 ドナー・リレーションズ部長 ダイアン・スチュアート氏からは、武田薬品など民間との連携により、産前産後ケアや保健医療従事者の育成が大きく進展し、母親が保健サービスに繋がったことが紹介されました。また、官民パートナーシップのみならず、国とのパートナーシップや国の主体性が重要であるとし、Gaviやグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)と協力しながらの感染症対策や保健財政支援を通してすべての人に保健医療を届ける努力を継続したいと述べました。

 

女性・子ども・青少年のためのグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)事務局長 リュック・ラヴィオレット氏は、36ヶ国での母子保健改善の実績を紹介し、衡平性・質・財政的な安定性を確保した持続可能な体制の重要性と、政府主導の計画、市民社会・民間との協働、資金インセンティブ、迅速なデータ活用が成果につながると説明、国の主体性と長期的な財政計画が成功の鍵であり、機関間の協力によりシナジーと効率性が生まれると述べました。

 


ゲイツ財団チーフ・ストラテジー・オフィサー アンクル・ヴォラ氏は、資金不足が母子保健や教育に深刻な影響を与えることを指摘し、国の主体性と強力なパートナーシップの必要性を強調しました。また、AIなどのイノベーションが遠隔地への保健サービス提供を低コストで可能にし、持続可能な解決策につながるとの展望を示しました。

 

Gaviワクチンアライアンスからは、事務局長 サニア・ニシュタール氏のビデオメッセージが寄せられ、母子は予防可能な原因で命を落としてはならず、必要な課題解決に向けた連携、公平なワクチンへのアクセスと強靭な保健システムの構築への不断の取組が不可欠であることが強調されました。また、シニア・ドナー・マネージャー 木島良輔氏より、2026年より始動する次期戦略Gavi 6.0では、改革イニシアティブ“Gavi Leap”を通じ各国の主体性を高め、2030年のSDGsUHC達成年限に向けて予防接種インパクトを加速的に生み出し貢献していくことが示されました。

 



3部:日本の役割とコミットメント


3部では、日本政府より、今後の日本の役割と取り組みに対するコミットメントが示されました。

 

まず、厚生労働省国際参与 井上肇氏は、日本で1930年代に高かった5歳未満死亡率が、医療技術、衛生管理、栄養、公衆衛生の発展とUHC達成を通じて大幅に改善された歴史を振り返りました。UHCナレッジハブを通じて各国の支援を進める方針と共に、特に母子の健康に注力し、厚生労働省として、また小児科医として、財務省、世界保健機関(WHO)、世界銀行と連携し、このアジェンダに取り組んでいくというコミットメントが示されました。

 

外務省国際協力局国際保健戦略官 喜多洋輔氏からは、人間の安全保障の理念の下、国際保健を外交の柱としてUHCを推進し、物資供与ではなく途上国の自立支援を重視する日本の特徴が示されました。特に、UHC推進と保健財政強化へのコミットメントの重要性はTICAD9横浜宣言でも確認されており、UHCナレッジハブを通して各国の財務・保健当局の能力強化を進めることが必要だと強調しました。日本にとって国際協力は不可欠であり、母子保健や性と生殖に関する健康と権利(SRHR)分野でも貢献を継続していきたいと述べました。

 

日本国際協力機構(JICA)国際協力専門員(保健)萩原明子氏は、JICAが「すべての女性と子どもの健康とウェルビーイング」の達成のため、保健システム強化とサービス改善、施設・地域・家庭をつなぐ継続ケアを重要視していると述べ、2030年までに人材16,000人の専門人材育成、3,000万人の母子への支援、家庭用母子健康記録の50ヶ国への拡大などの目標が共有されました。目標達成のためには政府、国際機関、アカデミア、NGO、民間企業との連携が不可欠であり、衡平性と強靭性を備えた保健システムの構築に向け、日本がリードしていくという決意が示されました。

 


フロアからのコメントとして、アジア開発銀行(ADB)人間社会開発セクター部保健スペシャリストの渡部明人氏は、開発銀行の保健分野への投資は限定的であり、十分に活用されていない現状を指摘しました。ADB2030年までに保健分野投資を10%へ拡大予定であること、またグラント(助成金)の減少傾向を踏まえ、ローン(借款)とグラントを組み合わせて譲許性を高め、魅力的な資金調達を促す重要性を説明しました。

 

また、参議院・衆議院両院の国会議員や前議員からは、国際保健に対する国会議員や国民の理解促進、日本のリーダーシップ強化、コミュニティ強化、民間セクターの巻き込みの重要性などについてのコメントがありました。

 


最後に、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン理事の小寺清(元財務省副財務官、元世銀・IMF合同開発委員会事務局長)より、会の総括と閉会あいさつが行われました。日本のODA借款について、保健分野への投資余地が大きく、借款は返済義務がオーナーシップを高めるため、持続性のある資金調達手段となりうることが指摘されました。課題としては、保健人材、サプライチェーン、デジタル化、国内資金動員、ドナー調整を挙げ、アフリカではルサカ宣言に基づく連携強化が挙げられました。最後に、日本国内では特に若い層では国際協力継続を望む声も強く、国際保健への投資は日本のソフトパワーの中核であると強調しました。

 

登壇者および参加者には、日本政府がこれまで実施してきた母子保健、栄養改善、予防接種率向上に向けた二国間・多国間ODAを可視化し、今後支援を強化すべき領域を特定したセーブ・ザ・チルドレンの新たな政策概要「母子の命と健康を守る衡平な保健システムの構築」を配布しました。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、今後も多様なステークホルダーと連携し、開発途上国の母子の命と健康を守る取り組みの重要性について働きかけや発信を続け、支援の拡大につなげていきます


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