アドボカシー(公開日:2025.12.25)
2024年、紛争下における子どもの重大な権利侵害は1年で30%増え、史上最悪の水準に
セーブ・ザ・チルドレンは、新しい報告書『子どもに対する戦争を止める:誰のための安全保障か?(Stop the War on Children: Security for Whom?)』を発表しました。この報告書は、安全保障の名のもと軍備増強する国家戦略が、最も守られるべき子どもたちの安全を脅かしている矛盾を指摘しています。
2024年は世界の子どもたちにとって最も危険な年になりました。世界の子どもの5人に1人、約5億2,000万人が紛争地帯で暮らしています。これは過去25年間で最悪の数字であり、3年連続で記録を更新しました。地域別にみると、アフリカに住む子どもたちが全体の32.6%を占めており、2007年以降初めてアフリカ地域が中東地域を上回りました。
さらに衝撃的なのは、国連が確認した紛争下の子どもへの重大な権利侵害[1]が4万1,763件に達し、前年から30%増加したことです。平均すると、毎日78人の子どもが殺害、負傷、誘拐、性暴力などの深刻な被害を受けている計算になります。学校や病院への攻撃も増加し、人道支援へのアクセスが阻まれる事例は7,900件以上にのぼりました。ジェンダー別にみると、これらの深刻な権利侵害の60%は少年、37%が少女に対して行われました。
報告書は、「国家の安全保障」や「軍事力強化」の名のもとに、子どもたちの安全が後回しにされている現状を指摘しています。2024年、世界の軍事支出は過去最高を記録しましたが、平和構築や紛争予防への投資は安全保障関連の総支出のわずか2%以下にとどまっています。紛争の激化に伴い、国連による子どもに対する重大な権利侵害の監視報告メカニズムは困難に直面しています。また、国際人道法や国際人権法への加盟・履行が停滞する一方で、武器輸出が継続されるなど、国際社会の責任も問われています。紛争当事者との関与、外交努力、そして人道支援が紛争下の子どもたちへの被害の軽減につながります。
シリア出身のシラさん(17歳)は、国連安全保障理事会で、世界のリーダーを前に呼びかけました。
「戦争は終わらなくてはなりません。地図の上だけでなく、私たちの街で、記憶の中で、そして子どもたちの遊びの中で。どうか神様、私たちがこの苦しみを生きる最後の世代でありますように。ミサイルの音を聞きながら眠り、恐怖とともに目覚める最後の世代でありますように。(中略)最後に、私は、体は生き延びたけれど、こころは今も恐怖の中にある世代の一人です。『避難』という言葉を『帰還』に、『瓦礫』という言葉を『家』に、そして『戦争』という言葉を『命』に代える手助けをしてください。」
紛争下の子どもたちを守るために、セーブ・ザ・チルドレンは以下の提言を各国政府に呼びかけます。
1. 紛争下の子どもを守ること
国際法と人道原則を遵守し、安全な人道支援へのアクセスを確保すること。子どもの保護・教育・保健への資金拡充、武器移転の停止、子どもの保護に関する国家戦略の策定、そして子どもの保護に関する専門性を優先すること。
2. 子どもに対する重大な権利侵害を犯した加害者の責任(アカウンタビリティ[2])を問うこと
国際・国内のアカウンタビリティ・メカニズムを強化し、子どもに対する犯罪を明示的に含めること。国連「子どもと武力紛争(CAAC)」などの枠組みを支援し、監視・報告体制を強化すること。
3. 紛争予防と平和構築への投資
平和構築と紛争予防の国家戦略を策定・実施し、すべての国が平和への貢献を明示すること。不平等、教育、気候変動、ジェンダー平等、子どもの保護、貧困削減、人権など、紛争の根本原因への投資を強化し、包摂的で子どもを中心においた、平和構築や平和のための研究を推進すること。
4. 子どもの声を聴き、参加を保障すること
子どもたちが平和構築、人道対応、政策策定に安全かつ意味のある形で参加できることを保障すること。子どもたちの将来を左右する課題を議論するような国際会議や、地域・国レベルの会議などへの子どもの参加を促進すること。
安全保障は誰のためのものなのでしょうか。国家や軍事の安全だけを優先する現状では、最も守られるべき子どもたちを犠牲にし続けます。私たちが求めるべき安全は、子どもたちの命と未来を守る安全です。紛争を終わらせ、子どもたちが安心して学び、遊び、夢を描ける世界を取り戻すために、国際社会の行動が急務です。
報告書全文(英語)はこちら
報告書概要(日本語)はこちら
[1] 紛争下の子どもに対する重大な権利侵害には以下の6つの形態があります。1)子どもの殺害と傷害行為、2)子どもの軍への徴兵と利用、3)子どもに対する性的暴力、4)子どもの誘拐、5)学校や病院に対する攻撃、6) 子どもへの人道的な支援を妨げること
[2]アカウンタビリティは「説明責任」と訳されることが多いですが、ここでは本来の意味である「説明する責任のみならず、結果生じた事象に対する責任をとること」を指しているため、「責任」と訳しています。
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