アドボカシー(公開日:2026.06.15)
プライド月間に寄せて: 危機下の教育における多様な子どもたちへの支援
セーブ・ザ・チルドレンでは、国内外での活動において、障害、性別、性的指向、言語など、あらゆる背景を持つ子どもたち一人ひとりの権利を守るとともに、多様性・公正性・包摂性(Diversity, Equity and Inclusion:DEI)を大切にした組織づくりを進めています。
6月はプライド月間[1]です。世界各地で、LGBTQ+当事者の人権を守り、社会の理解を広げるための啓発活動やイベントが行われます。このプライド月間にあたり、性的指向や性自認をめぐる子どもたちの置かれている状況や課題、そして誰ひとり取り残さない社会を目指すために、私たちが大切にしていることについてシリーズで発信します。シリーズ第2回となる今回は、危機下の教育における多様な子どもたちへの支援をテーマとした記事をお届けします。
第1回:プライド月間に考える、子どもの多様なSOGIEと権利
2025年、紛争の激化により新たに避難を余儀なくされた子どもたちは、1日平均3万5,000人に上るとされており、過去最多を記録しています[2]。紛争、強制移動、気候変動などの危機に直面する子どもたちは、権利が十分に保障されているとは言えません。そのような状況に加えて、社会的属性や経済的属性などによって、より深刻な立場に置かれる子どもたちがいます[3]。LGBTQ+の子どもたちもまた、最も脆弱な立場に置かれやすいと指摘されています。危機下において、包摂的で安全な支援を実現することはより一層重要性を増します。
INEE(Inter-agency Network for Education in Emergencies[4])によれば、LGBTQ+の子どもたちは危機下の教育において複合的な障壁に直面しています[5]。もともと社会の中にある偏見や差別が、混乱や不安が広がる危機的状況においてはより強く表れやすくなります。そのため、同性愛嫌悪やトランスフォビア(トランスジェンダーの人々に対する恐怖、嫌悪、偏見、差別 )などによるいじめや暴力が起こりやすくなります。教員や地域の大人たちが性的マイノリティが抱える問題について十分に理解していない場合、子どもたちは安心して相談することができず、家庭や地域からの支援も得られにくくなります。加えて危機下では安全に過ごせる場所や支援サービスが不足していることが大きな課題です。
さらに、多くの国では、LGBTQ+の人々への差別が、社会の偏見だけではなく法律の中に残っています[6]。現在でも国連加盟国のうち72ヶ国では、同性同士の合意のもとでの関係が犯罪とされています。また、25ヶ国ではLGBTQ+の団体を設立・登録すること自体に大きな制限があります。さらに22ヶ国では、道徳や宣伝といった観点や目的を理由に同性カップルやトランスジェンダーの存在について公に話したり表現したりすることを制限する法律があります。こうした差別的な法律が、紛争や人道危機の影響を受ける国々にも存在する場合があります。そのため、紛争や避難生活など、ただでさえ不安定な状況に置かれているLGBTQ+の子どもたちは、さらに孤立しやすくなり、いじめや暴力、差別にさらされる危険も高まります。 
セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下の共同避難所で子どもたちが安心して過ごせる場を支えています(レバノン、2026年3月)。
セーブ・ザ・チルドレンは紛争下の子どもの教育支援において、LGBTQ+の子どもたちが安心して過ごせるよう、以下の4つの方針に基づいて活動しています [6]。
性的指向や性自認・性表現(SOGIE)[7]にかかわらず、すべての子どもが安全に守られ、差別や暴力を受けることなく、安心して学び、学びに参加する権利を大切にしています。
2. 差別や迫害に直面する子どもたちを支援すること
LGBTQ+であることを理由に差別や暴力、排除を経験する子どもたちに寄り添い、必要な支援や理解を広げるために取り組んでいます。
3. 差別的な法律や社会環境が子どもに与える影響を認識すること
同性同士の関係を犯罪とする法律や、LGBTQ+について公に語ることを制限する社会環境は、子どもたちの孤立や排除を深める要因になり得ると考えています。
4. あらゆる場面で平等と包摂を大切にすること
政府、学校、地域社会、支援機関など、あらゆる関係者と関わる際にも、差別を許さず、平等と包摂を尊重する姿勢を大切にしています。
紛争の長期化や気候変動による災害の深刻化により、多くの子どもたちが教育から取り残されています。そして、もともと周縁化されているLGBTQ+の子どもたちは、さらに大きな影響を受けます。危機の状況下であっても、多様性を前提とし、一人ひとりのニーズに応じた支援を届けていくことが不可欠です。そのためには、子どもたちが自らの権利や多様なあり方について学び、安全に過ごすための知識と力を身につけられるよう、継続的な教育支援が重要です。
プライド月間は、すべての子どもたちがどのような状況にあっても尊厳を持って学べる社会を目指し、行動を問い直す機会でもあります。危機の時代にこそ、「誰一人取り残さない教育」を実現していくことが求められます。
DEIタスクチーム
[1] プライド月間: LGBTQ+(性的マイノリティ)の権利を啓発し、多様性を祝福する「プライド月間(Pride Month)」。世界各地でパレードやイベントが開催され、自分らしく生きることを肯定し合うとともに、差別や偏見のない社会を目指すための様々な取り組みが行われる。
[3] 多様性の視点から考える紛争下で取り残されやすい子どもたちと教育支援
[4] INEE: 緊急時・危機下における教育分野の質向上とアクセス確保を目的として、国際機関、NGO、政府関係者などが連携するグローバル・ネットワーク。すべての人が安全で質の高い教育を受ける権利の実現を目指している。
[5] INEE (2025) ‘Safe, Protective, and Affirming Education: Supporting LGBTQIA+ Learners in Emergencies’
[6] Save the Children ‘Save the Children’s Sexual Orientation and Gender Identity and Expression (SOGIE) Policy Position | Save the Children’s Resource Centre’
[7] SOGIEに関してはプライド月間のブログシリーズ第一回目の記事を参照してください。 プライド月間に考える、子どもの多様なSOGIEと権利



