アドボカシー(公開日:2025.03.31)
【開催報告】第5回自治体職員向け勉強会「子どもの権利救済機関と子どもの最善の利益〜子どもの意見を聴かれる権利の保障の視点から〜」
セーブ・ザ・チルドレンでは、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」の後援を得て、「子どもの権利救済機関と子どもの最善の利益」をテーマとした勉強会を、2025年3月7日に開催しました。今回の勉強会には、対面とオンラインでの参加を合わせ、約60の自治体から約110人の行政職員、地方議員、市民団体の参加がありました。
当日は、セーブ・ザ・チルドレン専務理事・事務局長の高井明子より冒頭あいさつが述べられたのち、セーブ・ザ・チルドレンによる調査の結果をまとめた「自治体における子どもの権利条例と子どもの権利救済制度に関する調査報告書〜子どもが安心して声をあげられる・相談できる環境づくりに向けて〜」が紹介されました(報告書のダウンロードはこちらから)。
吉永省三氏(千里金蘭大学名誉教授)による基調講演では、日本の子どもの権利条約の批准(1994年)以降の30年間を振り返り、個人の責任をもって問題解決を追求する「個人モデル」から子どもに関わる環境や社会の仕組みを変えていくという「社会モデル」への変遷についての解説や、子どもが主体性を回復するプロセスを「救済」と捉えるエンパワーメント・アプローチの考え方の紹介などがありました。また、「社会モデル」の実現に向けた子どもの権利条例と権利救済機関の段階的な発展の方向性が提示されました。
続く各自治体からの報告では、来年度よりさらに子どもなどの意見を反映しながら「こどもの権利条例」制定と権利擁護の体制の検討を進めようとしている富田林市の大堀雄一郎氏(こども政策課課長代理兼政策係長)より、権利救済にも関係する子どもからのアンケート回答の紹介や、子どもの権利救済機関設置に向けた検討状況、今後の課題などについての報告がありました。
次に、中野区子どもオンブズマンの野村武司氏(東京経済大学現代法学部教授)からは、不可分一体としての子どもの権利の捉え方や大人との関係の中で捉えられる「意見を聴かれる権利」の性質について話があった後に、子どもの「思い・考え・意見」を伝えるために調整、意見表明などを行う中野区子どもオンブズマンの役割などについての説明がありました。
名古屋市の子どもの権利擁護委員・間宮静香氏(日本弁護士連合会子どもの権利委員会副委員長)からは、子どもからの相談を受ける窓口となる「なごもっか」の体制や子どもの権利を基盤とした擁護委員の活動、名古屋市における学校に関わる権利救済に特徴的な課題などについて報告がありました。
豊田氏の子どもの権利擁護委員・渡邊佐知子氏からは、豊田市子ども条例の主要な権利規定、擁護委員の役割などについて説明があった後に、子どもの権利学習プログラムと擁護委員とのかかわり、家庭におけるいくつかの権利救済事例を基に、関係機関との連携・協働の必要性などについての報告がありました。
続くパネルディスカッション・質疑応答では、子どもオンブズパーソンの独立性と事務局によるマネージメントのあり方や、子どもオンブズパーソンに対する市民からの理解の促進、多職種からなる体制整備の重要性、広域自治体に子どもオンブズパーソンを設置することの意義などについて活発な意見交換が行われました。
勉強会実施後の参加者からは、「こどもの意見を聴くことが、軽んじられていると思っていましたが、私自身も、子どもの意見を聴くことをもっと重要視しないといけないと気づかされました」、「救済機関にこども自身でつながることは、ハードルが高いかもしれない。普通の市民のなかにこどもを権利の主体とするまなざしを醸成することとセットですすめる必要がある」、「大人目線ではなく子ども目線での検討が必要であること。子どもではなく大人が変わらなければいけない」といった声が寄せられました。
アンケート結果詳細については、こちらから。
自治体における子どもの権利条例の制定が進む中、条例に規定される子どもの意見を聴くことや子どもの参加の促進をはじめとする子ども施策が「絵に描いた餅」とならないよう、子どもをエンパワーし、関連制度の改善につなげていく子どもの権利救済機関の役割は、ますます重要になってくると考えられます。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利条例制定や子どもの権利救済機関の設置を含む自治体における子どもの権利推進の取り組みについて、引き続き情報や意見交換の場を提供していきたいと考えています。
【お問い合わせ】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部(堀江、村上)
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