アドボカシー(公開日:2026.07.24)
【報告】「学校保護宣言 ナイロビ国際会議」に参加しました〈DAY 2〉
会議2日目は、いかに「学校保護宣言」の実効性を担保し、紛争下の教育の保護を強化していくかがテーマとなりました。現地で参加したスタッフより、複数のセッションの注目ポイントをお届けします。
※会議1日目の報告ブログはこちら
現状、紛争における「教育への攻撃」の訴追は、非常に限定的です。
国際法に基づく司法強化に取り組むグローバル・ライツ・コンプライアンス(GRC)のルビー・メイ・アクセルソン氏は、その理由の1つとして、学校の軍事目的使用を挙げました。部分的にであっても軍事利用されている学校が攻撃された場合、その教育施設が正当な軍事目標であったと判断されることが多いため、検察官の訴追裁量権が働き、捜査自体が見送られることが多いのです。
アクセルソン氏はまた、「国際的な捜査・訴追のプロセスにおいても、子どもは独立した権利主体としてみなされず、司法関係者の間でも子どもの聴取などにおける専門性が不足していることから、子どもたちは不可視化されることが多い。教育への権利の侵害、それ自体が訴追の構成要件となるよう、認識を改めていかなければならない」と訴えました。
同様に、人権侵害事案について法律家の派遣等を行うジャスティス・ラピッド・レスポンス(JRR)のミシェル・オリエル氏も、「学校保護宣言」は各国政府に対して、「教育への攻撃」単独での捜査、加害者の訴追、そして被害者支援を行うよう要請していると指摘しています。
「教育への攻撃」は国際人道法の重大な違反となり得ると指摘したうえで、「国内法においても『教育への攻撃』を刑事罰の対象とし、それらが重大な人権侵害として扱われるよう、裁判所の機能強化や司法関係者の研修などを通じて、アカウンタビリティを果たさなければならない」と呼びかけました。
教育を攻撃から守る世界連合(GCPEA)では、これまでにも「教育への攻撃」の調査・分析のガイダンス等を公開していますが、ナイロビ会議に合わせて同連合のアリソン・バクタ氏から新たに、ジェンダー視点の分析報告書も発表されています。
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のビード・シェパード氏からも、現在国連で策定が進められている「人道に対する罪に関する条約」において、女性や女の子の教育からの排除や組織的暴力が含まれる可能性があるなど、教育への攻撃の不処罰をなくしていく動きについて報告がありました。
左から、アクセルソン氏(GRC)、オリエル氏(JRR)、バクタ氏(GCPEA)、シェパード氏(HRW)
「紛争下の教育」の当事者・地域との連携
「学校保護宣言」の内容を確実に履行していくうえで、紛争下で学び・教える当事者との協働が不可欠であることも、複数のセッションで提起されていました。
ケニア西部バリンゴ郡の小中一貫校で副校長を務めるエリザベス・ヤトール先生は、武装勢力による放火や襲撃により、自身も3人の生徒と1人の同僚を失ったといいます。「紛争の前線で教えることには覚悟が必要。教員たち―特に女性の先生方は脅迫にもさらされ、教壇を追われた人たちもいる」と証言し、元々550人ほどの子どもたちが在籍していた学校が一時は空っぽになってしまったと振り返りました。
現在は、半数近くまで生徒が少しずつ学校に戻ってきているものの、「学校への攻撃を野放しにしてはいけない。教員、保護者、そして生徒たちが参画する形で、安全な学習環境を確保していかなければならない」と力説しました。
ウガンダ・南スーダンと隣接するケニア北西部のトゥルカナ地域から参加していた16歳のアイボンヌさんも、特に女性・女子への影響について表明していました。「女子は多くの場合、最初に学校へ通えなくなり、最初に女性器切除や結婚をさせられて、復学できるのは最後だ」としつつ、それでも「女子はサバイバーであるだけでなく、学習者であり、リーダーや変革者でもある」と言います。
教育を中断させられた子どもたちの復学には多くの障壁を伴うと、ナイジェリア北部の紛争地域で支援活動を続けるニーム財団のベルスク・タプガン=アリミケナ氏は報告します。ある13歳の女子は、人々が殺されるのを目撃し、自身の学校は焼き払われ、数年間にわたり学校へ通えない期間がありました。やっと復学できることとなっても、同級生よりずっと学習は遅れてしまい、学校が「トラウマを想起させる場所」になってしまったことから勉強に集中することが困難だったそうです。
「『学校保護宣言』は、教育を途絶えさせないための包括的な行動を求めている。再び中途退学に追い込まれないよう、心身のトラウマを抱える子どもたちに配慮した教育環境の整備や教員研修が必要」と強調しました。
左から、ヤトール先生(カピンダシム小中学校)、アイボンヌさん、タプガン=アリミケナ氏(NEEM)
国際人道法との関係:「学校保護宣言」を既存の枠組みに位置付ける
「学校保護宣言」と国際人道法との関係については、日本の国会質疑でも度々提起されています。ナイロビ会議では、赤十字国際委員会(ICRC)のジョルジオ・メコール氏より、この法的解説書が新たに発表されました。
国際人道法(IHL)と国際人権法には、学校の軍事利用を禁ずる特定の条文はないものの、「学校保護宣言」に付随する「武力紛争下で学校や大学を軍事目的使用から守るためのガイドライン」は、IHLの趣旨と一貫した内容です。新たな法的解説書では、ガイドラインの6項目それぞれについて、IHLの該当する条文の解説などがなされています。
メコール氏は、学校の軍事利用は、国際人道法の複数の条文に違反する可能性があると指摘し、「『学校保護宣言』に賛同し実践することは、IHL違反の可能性を回避することにもつながる」と強調しました。そして、2024年に始動し日本政府も参加している、国際人道法のための政治的なコミットメントを促進するグローバル・イニシアチブのもと、IHLの誠実な履行を強化するよう呼びかけました。
この国際会議は、「学校保護宣言」の賛同国政府が主な参加者であるものの、フィリピン政府からも未賛同国として登壇がありました。
フィリピン国防省のアンジェリン・ローズ・アルフェレズ少佐は、関係省庁間で「学校保護宣言」と国内法の整合性のコンサルテーションを行っていること、ICRCの法的助言のもと軍関係者の研修も実施していることなどを報告。2018年施行の国内法による学校への攻撃の刑罰化、2021年のフィリピン軍司令による学校の軍事利用に際する事前許可の義務付けなど、法整備が進展していることや軍関係者間でも実際にルール意識が浸透していることなどの説明がなされました。
また、国連・平和維持活動局(UNDPO)のマリア・トロバト氏より、平和維持活動(PKO)での取り組みについても発表がありました。PKOでは子ども・教育の保護を活動の中核に据えており、実際に2017年以降、PKOによる学校の軍事利用は厳に禁じられています。
2023年公表のUNDPOハンドブックでは、PKO総司令官指令のひな形に「学校保護宣言」も盛り込まれ、以降のミッションで応用されていることが報告されました。同ひな形には、各部隊への「子どもの保護」担当者の配置、学校の軍事利用の回避と利用後の撤退手順などが盛り込まれており、PKO派遣者はこの内容に応じた研修を実施しているとのことです。
国際法・国内法や既存の枠組みにおいて、「学校保護宣言」が位置づけられつつあることを実感する場面でした。
左から、メコール氏(ICRC)、アルフェレズ少佐(フィリピン国防省)、トロバト氏(UNDPO)
ケニア政府の取りまとめた会議の成果文書では、宣言の実行を測るための「セルフ・アセスメント・ツール」も含めて、各国政府のレビューを経て公開され、すべての国による活用が呼びかけられています。ナイロビ会議を踏まえた提言は、GCPEAによる最新の国際調査報告書「攻撃される教育2026」にも盛り込まれました。
ナイロビ会議では、法の遵守や平和外交を掲げる日本に対しても、「学校保護宣言」への賛同を期待する声が聴かれました。
2026年は、日本の国連加盟から70年にあたります。日本政府にも、「学校保護宣言」を支持しその実効性を高め、紛争下の教育を守るため国際社会との連携を深めてほしいと考え、セーブ・ザ・チルドレンでは引き続き発信・提言を継続していきます。
議論に参加したアフリカ各国の子どもたち
左から、イブラヒムさん、モーゼスさん、スコーラさん、ラマダンさん
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(アドボカシー部 社会啓発チーム)




