中東(公開日:2021.03.24)
【レバノン】ベイルート大規模爆発で被害に遭った子どもたちが、日常生活を取り戻すための取り組み
レバノンでは、2020年8月4日にベイルート湾港で大規模爆発が発生しました。これによる死者は220人、負傷者は約6,500人と報告されています。この大規模爆発は、すでにさまざまな困難に直面していたレバノンの人々の状況をさらに悪化させました。

レバノンは、大規模爆発発生以前よりさまざまな課題があり、そのうちの1つが2011年に勃発したシリア危機です。発生から10年が経った現在でも、レバノンで避難生活を送るシリア難民は約150万人にのぼるといわれており、人口当たりの難民受け入れ数は世界一です。これにより、レバノンの人々の生活にも影響があることから、シリア難民への支援だけではなく、受け入れている地域のレバノンの人たちへの支援も必要とされています。
2つ目の課題は、レバノン経済の悪化です。かねてよりレバノン経済は、観光業や金融業、外国からの送金など国外の情勢に影響を受けやすい分野に依存しており不安定でした。しかし、2019年10月に発生した大規模な反政府デモの影響を受け、経済はさらに悪化しています。
3つ目の課題は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大です。レバノンでは、2020年2月21日に初めて感染者が確認され、2021年3月12日現在で感染者数累計は40万8,909人、死者数5,230人と報告されています。2020年3月以降、断続的にロックダウンが発令されてきたほか、感染拡大が加速した2020年秋以降は、レバノン全域で24時間の外出規制が断続的に課されています。また、病院など生活に必要不可欠なサービスを提供する人は、出勤のために政府からの許可証をインターネットで取得する必要があります。このように、世界でも比較的厳格なロックダウン措置をとっているため営業時間の短縮や停止を余儀なくされた個人事業主も多く、2020年8月時点で収入のない世帯は37%にのぼりました。
そして、2020年8月にベイルート湾港で発生した大規模爆発は、すでに困窮していた人々の生活に追い打ちをかけました。約30万人が住居を失ったほか、爆発によるショック、家族や友人、大切なものを失うなど約10万人の子どもたちがさまざまな影響を受けています。さらに、大規模爆発により人々は安全に暮らせる住居を失っただけでなく、生計手段を失ったことにより児童労働や児童婚などの対処法をとる世帯も見られるなど、さらなる問題も生じています。
これらの状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンは2020年11月13日より大規模爆発で被災した人々へ、心理社会的支援や子どもの保護、家賃給付支援を行っています。
心理社会的支援では、眠ることができない、家族の外出を嫌がる、爆発があったときにいた部屋に入ることができないなどの心理社会的負担を抱えた子どもたちに対して、レジリエンス(困難からの回復力)を高めるための研修を実施しています。また、子どもとの関わり方に不安を抱える親や養育者に対しては、感情コントロールプログラムを実施しています。
子どもの保護の支援では、生活に必要な資金を賄うために児童労働に従事せざるを得ない子どもや、暴力、ネグレクトなどの被害に遭っている子ども、深刻な心理社会的負担がある子どもとその養育者を対象として個別支援を提供しています。これまでに50人の子どもへの個別支援を実施しており、深刻なケースに関しては定期的にケースワーカーが訪問し、子どもの状況の改善を図っているほか、必要に応じて専門機関の支援を受けられるよう調整を行っています。
また、117世帯に対し3ヶ月分の家賃給付を行っています。家賃給付により、子どもたちやその家族が当面の間安全に暮らせる住居を確保できるだけでなく、子どもの児童労働や早婚のリスクも軽減することができます。
レバノンのロックダウン措置は2月下旬以降段階的に緩和されつつありますが、医療支援など命を守る支援以外はリモートでの実施を余儀なくされている状況です。本事業も主にリモートで活動を実施しています。たとえば子どもへの研修は、現地で最も人々に浸透しているWhatsAppという通話・メッセージアプリを使用して10人ずつのグループを作り、オンライン上で行っています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、日本人スタッフはレバノンへ渡航できなくなり、レバノンで支援を行うスタッフも子どもに直接会って支援を実施することが困難な状況が続いています。しかしながら、このような状況下でも工夫しながら活動を継続しています。大規模爆発により被災した人々が一日でも早く日常を取り戻せるよう、そして、脆弱な状態に置かれた人たちが取り残されないよう、今後も支援を実施していきます。
この事業は、皆様からのご寄付およびジャパン・プラットフォームのご支援により実施しています。
(海外事業部 ベイルート大規模爆発支援事業担当 加藤笙子)
International Medical Corps, Beirut Explosion Situation Report February 10 2021.
UNHCR, Lebanon.
外務省、レバノン共和国基礎データ
UNICEF, Lebanon Situation Report No.3 The Beirut Explosions As of 11 August 2020, p.2
International Medical Corps, Beirut Explosion Situation Report February 10 2021.
UNICEF, Lebanon Situation Report No.3 The Beirut Explosions As of 11 August 2020, p.2

レバノンは、大規模爆発発生以前よりさまざまな課題があり、そのうちの1つが2011年に勃発したシリア危機です。発生から10年が経った現在でも、レバノンで避難生活を送るシリア難民は約150万人にのぼるといわれており、人口当たりの難民受け入れ数は世界一です。これにより、レバノンの人々の生活にも影響があることから、シリア難民への支援だけではなく、受け入れている地域のレバノンの人たちへの支援も必要とされています。
2つ目の課題は、レバノン経済の悪化です。かねてよりレバノン経済は、観光業や金融業、外国からの送金など国外の情勢に影響を受けやすい分野に依存しており不安定でした。しかし、2019年10月に発生した大規模な反政府デモの影響を受け、経済はさらに悪化しています。
3つ目の課題は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大です。レバノンでは、2020年2月21日に初めて感染者が確認され、2021年3月12日現在で感染者数累計は40万8,909人、死者数5,230人と報告されています。2020年3月以降、断続的にロックダウンが発令されてきたほか、感染拡大が加速した2020年秋以降は、レバノン全域で24時間の外出規制が断続的に課されています。また、病院など生活に必要不可欠なサービスを提供する人は、出勤のために政府からの許可証をインターネットで取得する必要があります。このように、世界でも比較的厳格なロックダウン措置をとっているため営業時間の短縮や停止を余儀なくされた個人事業主も多く、2020年8月時点で収入のない世帯は37%にのぼりました。
そして、2020年8月にベイルート湾港で発生した大規模爆発は、すでに困窮していた人々の生活に追い打ちをかけました。約30万人が住居を失ったほか、爆発によるショック、家族や友人、大切なものを失うなど約10万人の子どもたちがさまざまな影響を受けています。さらに、大規模爆発により人々は安全に暮らせる住居を失っただけでなく、生計手段を失ったことにより児童労働や児童婚などの対処法をとる世帯も見られるなど、さらなる問題も生じています。
これらの状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンは2020年11月13日より大規模爆発で被災した人々へ、心理社会的支援や子どもの保護、家賃給付支援を行っています。
心理社会的支援では、眠ることができない、家族の外出を嫌がる、爆発があったときにいた部屋に入ることができないなどの心理社会的負担を抱えた子どもたちに対して、レジリエンス(困難からの回復力)を高めるための研修を実施しています。また、子どもとの関わり方に不安を抱える親や養育者に対しては、感情コントロールプログラムを実施しています。
子どもの保護の支援では、生活に必要な資金を賄うために児童労働に従事せざるを得ない子どもや、暴力、ネグレクトなどの被害に遭っている子ども、深刻な心理社会的負担がある子どもとその養育者を対象として個別支援を提供しています。これまでに50人の子どもへの個別支援を実施しており、深刻なケースに関しては定期的にケースワーカーが訪問し、子どもの状況の改善を図っているほか、必要に応じて専門機関の支援を受けられるよう調整を行っています。
また、117世帯に対し3ヶ月分の家賃給付を行っています。家賃給付により、子どもたちやその家族が当面の間安全に暮らせる住居を確保できるだけでなく、子どもの児童労働や早婚のリスクも軽減することができます。
レバノンのロックダウン措置は2月下旬以降段階的に緩和されつつありますが、医療支援など命を守る支援以外はリモートでの実施を余儀なくされている状況です。本事業も主にリモートで活動を実施しています。たとえば子どもへの研修は、現地で最も人々に浸透しているWhatsAppという通話・メッセージアプリを使用して10人ずつのグループを作り、オンライン上で行っています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、日本人スタッフはレバノンへ渡航できなくなり、レバノンで支援を行うスタッフも子どもに直接会って支援を実施することが困難な状況が続いています。しかしながら、このような状況下でも工夫しながら活動を継続しています。大規模爆発により被災した人々が一日でも早く日常を取り戻せるよう、そして、脆弱な状態に置かれた人たちが取り残されないよう、今後も支援を実施していきます。
この事業は、皆様からのご寄付およびジャパン・プラットフォームのご支援により実施しています。
(海外事業部 ベイルート大規模爆発支援事業担当 加藤笙子)
International Medical Corps, Beirut Explosion Situation Report February 10 2021.
UNHCR, Lebanon.
外務省、レバノン共和国基礎データ
UNICEF, Lebanon Situation Report No.3 The Beirut Explosions As of 11 August 2020, p.2
International Medical Corps, Beirut Explosion Situation Report February 10 2021.
UNICEF, Lebanon Situation Report No.3 The Beirut Explosions As of 11 August 2020, p.2