バングラデシュ(公開日:2025.07.11)
【バングラデシュ】裁判官、警察、弁護士など子どもの法的権利を守る多職種とのワークショップ開催
(2024年1月より、バングラデシュ南東沿岸部に位置するコックスバザール県で実施している「子どもの保護のシステム強化および青少年のレジリエンス強化事業」にて実施しました。事業の詳細はこちら。)
バングラデシュでは、子どもの権利に関する法整備が進んでいる一方で、現場での子どもの権利推進に関する実践や制度の運用面ではさまざまな課題が残されています。特に、子どもに優しい司法手続きの実現や、関係機関間の連携体制の強化、専門的な知識を持つ人材の確保と育成などには、依然として大きな課題があります。そのため、この事業では、子どもに関わる主要な関係者を招致したワークショップを企画しました。
ワークショップ当日は、コックスバザール地方裁判所の所長判事1、バングラデシュ警察の子ども担当デスクの警察官2、社会福祉局の保護観察官・保護司3、女性・子ども保護特別裁判所の判事4、地方裁判所の判事5、弁護士会代表6、そして武装警察(APBN)7 の関係者など、子どもを守るさまざまな職種の人たちが参加しました。
このように多職種の関係者が一堂に会するのは初めてであり、出席率は100%を超えるほど高く、関心の高さがうかがえました。これら子どもの保護分野や司法に関わる主要な関係者が、子どもの法的権利を守るための具体的な行動について、経験を共有しながら議論しました。
また、ワークショップでは、「子ども法2013」の内容を振り返るとともに、現場で子どもに関する課題に取り組んできた経験が語られました。法律があっても現場でうまく機能しないことや、子どもを守るために必要な工夫など、現実的な課題について率直な意見交換が行われました。
例えば、コックスバザール地方裁判所の所長判事からは「子ども法2013」で設置が定められている子ども保護特別裁判所が、施設の老朽化や規模の問題で長年設置できていないことが指摘されました。また、子ども担当デスクの警察官からは、子どもとのコミュニケーション方法が分からず、学ぶ機会もなかったという課題が共有されました。さらに、弁護士会代表からは、このワークショップが、子どもの法的権利について特化して学ぶ初めての機会となったことが述べられました。
最後に、コックスバザール地方裁判所の所長判事は次のように述べました。「子ども法2013は、子どもたちに正義をもたらすための強固な土台を築いています。しかし、その効果は現場で誠実に実施されるかどうかにかかっています。法律があるだけでは十分ではありません。大切なのは、きちんと実行されることです。子どもたちに対する私たちの姿勢は、思いやりと共感に基づいていなければなりません。この法律は、子どもたちを守るだけでなく、新しい可能性を生み出すものであるべきです。それこそが、私たち全員の目指すべき目標です。」
セーブ・ザ・チルドレンは、これらの課題解決に向けて、今後も関係者と連携しながら支援を続けていきます。
本事業の活動はソニーグループ株式会社が設立した「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」のご支援と個人・法人の多くの皆さまのご寄付により実施 しています。
(海外事業部バングラデシュ駐在員 田部井梢)
1 District and Sessions Judge,Cox’s Bazar(地区裁判所・刑事裁判所の判事)
→ 日本で言えば「地方裁判所の所長判事」にあたる。地域の裁判所のトップで、民事・刑事の大きな事件を担当する。
2 The Child Affairs Police Desk of Bangladesh Police(子ども担当警察デスクの警察官)
→ 各警察署に設置された、子どもに関する事件や相談を専門に扱う担当者。日本でいう「少年係」や「子ども・女性安全担当」の警察官に近い役割を担う。
3 Probation Officers from the Department of Social Services(社会福祉局の保護観察官)
→ 裁判所から指示を受けて、子どもや若者の更生や社会復帰を支援する公務員。日本の「保護観察官」や「児童福祉司」と類似の役割を担う。
4 Additional District and Sessions Judge from the Women andChildren Repression Prevention Tribunal(女性・子ども保護特別裁判所の判事)
→ 女性や子どもへの暴力や虐待など、特別な事件を専門に扱う裁判所の判事。日本でいう「家庭裁判所の裁判官」や、性犯罪・児童虐待など特定分野を担当する裁判官にあたる。
5 Judges from the District and Sessions Judge(地区裁判所の判事)
→ 地域の裁判所で、さまざまな事件を担当する判事。日本の地方裁判所や家庭裁判所の裁判官に相当する。
6 the BAR Association(弁護士会)
→ 弁護士の団体である「弁護士会」の代表者。
7 APBN(Armed Police Battalion、武装警察大隊)
→ 特別な訓練を受けた警察部隊で、治安維持や重要施設の警備、大規模な事件の対応などを担当する。日本の「機動隊」や「警備部隊」に近い存在。




