日本/地域NPO支援(公開日:2025.06.06)
【活動報告】佐賀県の学童保育における防災力向上を目指して−実態調査から政策提言まで
放課後児童クラブ(学童保育)は、小学生の子どもたちが放課後や長期休みを過ごす大切な居場所です。しかし、もし学童保育で子どもたちがいる時に地震や大雨といった災害が起こったら、どうなるのでしょうか?実は、学童保育における防災の備えはまだ十分と言えない状況があります。
2022年12月から2025年2月まで、セーブ・ザ・チルドレンは特定非営利活動法人佐賀県放課後児童クラブ連絡会(以下「連絡会」)と連携し、佐賀県下の学童保育における防災の備えを向上させるための調査および政策提言事業を進めてきました。事業における一連の活動は連絡会が主体となって企画実行し、セーブ・ザ・チルドレンはこの事業のための資金支援、調査および政策提言への助言、子どものセーフガーディングの取り組み支援を行いました。
実態調査
まず2023年2月から7月にかけ、連絡会は佐賀県下の学童保育施設256ヶ所を対象に、防災の実態調査を行いました。アンケートには、防災備品、避難訓練、緊急時の引き渡し方法など、防災に関する備えがどれだけ実施されているか詳細に聞くための設問が47項目並べられました。
246ヶ所の学童保育より回答を得て集計した結果、備えがまだ十分でない施設も多数存在することが分かりましたが、中でも「緊急時の対応を保護者に周知し、引き渡しなどの連携がスムーズにいくように備えておくこと」「避難計画、避難マニュアルの周知、避難訓練の実施を実効性ある形で連動させること」は特に重要で、至急取り組むべき事項であると分かりました。
連絡会は、調査全体の結果および重要ポイントを報告書にまとめました。この調査報告書は、その後県や各市町の学童保育担当部署、首長、議員などに対して提言を行う際の中心的な資料となりました。
完成した調査報告書はこちらから
また学童保育支援員に対しても、研修などの機会に調査結果を共有し、できるところから備えを進める必要性を伝えてきました。さらに、防災に関する現状や意識を支援員に直接インタビューして報告書にまとめ、現場の声を県や市町へ伝える資料として活用していきました。

左:アンケート調査報告書 右:学童保育支援員インタビュー報告書
子どもアンケートおよびワークショップ
2023年11月から2024年2月には、学童保育に集う子どもたち自身の声や力を防災向上に活かすため、子どもアンケートや子どもワークショップを合計3回行いました。
2024年2月28日に佐賀県有田市の学童保育で行ったワークショップには、小学1年生から6年生まで30人が参加しました。非常用持ち出し袋を使ったワークでは、袋に入っている防災用品やゲーム、お菓子などを出し、見て触ってもらった上で、「自分だったら持ち出し袋に何を入れたい?」と問いかけたところ、「(ホット)カイロはいいよね。」「大切なものはたくさんあるけれど、自分で選んで持って行く。」など、子どもたちそれぞれから声が上がりました。
このように必要な知識を得て考える機会があれば、子どもたちは自分から意見を出し、備えを進める力を持っています。こうした活動の結果を受け、「学童保育の防災は子どもたちとともに進めることが大切である」ことも支援員や県・市町へ訴えていきました。


佐賀県こども計画への意見提出
連絡会は、2024年7月から11月にかけて、2025年度以降実施の「佐賀県こども計画」へ学童保育防災向上の方針が明記されるよう、計画案への意見提出に集中的に取り組みました。
県から示された新計画案に対し、連絡会が「学童保育および関連機関の連携の明記」「防災に関する項目の新設」などを意見としてまとめ、提出したところ、これらは実際に計画内に採用されました。学童保育防災の取り組みを推進する根拠が公的文書に明記されたことにより、今後の実行支援が後押しされることになりました。
2025年度からの佐賀県こども計画はこちら
学童保育での防災から地域防災へ
本事業完了間際の2025年2月26日には、学童保育防災と地域防災を考えるシンポジウムを佐賀県小城市にて開催しました。参加者は県下の学童保育支援員、市議会議員、防災士資格を持つ市民など43人でした。
神戸大学の桜井愛子教授より学校現場の防災について、佐賀大学の五十嵐勉名誉教授より地域防災の取り組みについてそれぞれ紹介がされた後、連絡会から学童保育防災基礎調査の結果概要が報告されました。セーブ・ザ・チルドレン国内事業部プログラムマネージャーの瀬角からは、子どもワークショップの様子を紹介しながら「学童保育の防災は子どもとともに進めることができる」ことを報告しました。
学童保育の防災の動きは、地域防災を進める上でも要となりうるものです。シンポジウムでは、学童保育から学校、地域へのつながりを積極的に持つことで防災の備えが強まり、子どもたちを守ることができるという方向性も示されました。


2年半にわたった今回の事業を通じて、連絡会のスタッフからは「アンケート作成、提言の仕方、施策への反映を働きかける方法までを広く学んだ」との声がありました。
今後佐賀県内では、県こども計画に採り入れられた防災方針が具体的に実行され、各学童保育における防災の備えが実際に向上することが重要です。連絡会は今後も県下の学童保育現場を個別訪問するなどして、防災の取り組み推進をリードしていく予定です。
またセーブ・ザ・チルドレンは、今回の実績を踏まえ、他地域での学童保育防災向上を目指す取り組みも引き続き実施していきます。
(国内事業部 瀬角 南)
2022年12月から2025年2月まで、セーブ・ザ・チルドレンは特定非営利活動法人佐賀県放課後児童クラブ連絡会(以下「連絡会」)と連携し、佐賀県下の学童保育における防災の備えを向上させるための調査および政策提言事業を進めてきました。事業における一連の活動は連絡会が主体となって企画実行し、セーブ・ザ・チルドレンはこの事業のための資金支援、調査および政策提言への助言、子どものセーフガーディングの取り組み支援を行いました。
実態調査
まず2023年2月から7月にかけ、連絡会は佐賀県下の学童保育施設256ヶ所を対象に、防災の実態調査を行いました。アンケートには、防災備品、避難訓練、緊急時の引き渡し方法など、防災に関する備えがどれだけ実施されているか詳細に聞くための設問が47項目並べられました。
246ヶ所の学童保育より回答を得て集計した結果、備えがまだ十分でない施設も多数存在することが分かりましたが、中でも「緊急時の対応を保護者に周知し、引き渡しなどの連携がスムーズにいくように備えておくこと」「避難計画、避難マニュアルの周知、避難訓練の実施を実効性ある形で連動させること」は特に重要で、至急取り組むべき事項であると分かりました。
連絡会は、調査全体の結果および重要ポイントを報告書にまとめました。この調査報告書は、その後県や各市町の学童保育担当部署、首長、議員などに対して提言を行う際の中心的な資料となりました。
完成した調査報告書はこちらから
また学童保育支援員に対しても、研修などの機会に調査結果を共有し、できるところから備えを進める必要性を伝えてきました。さらに、防災に関する現状や意識を支援員に直接インタビューして報告書にまとめ、現場の声を県や市町へ伝える資料として活用していきました。

左:アンケート調査報告書 右:学童保育支援員インタビュー報告書
子どもアンケートおよびワークショップ
2023年11月から2024年2月には、学童保育に集う子どもたち自身の声や力を防災向上に活かすため、子どもアンケートや子どもワークショップを合計3回行いました。
2024年2月28日に佐賀県有田市の学童保育で行ったワークショップには、小学1年生から6年生まで30人が参加しました。非常用持ち出し袋を使ったワークでは、袋に入っている防災用品やゲーム、お菓子などを出し、見て触ってもらった上で、「自分だったら持ち出し袋に何を入れたい?」と問いかけたところ、「(ホット)カイロはいいよね。」「大切なものはたくさんあるけれど、自分で選んで持って行く。」など、子どもたちそれぞれから声が上がりました。
このように必要な知識を得て考える機会があれば、子どもたちは自分から意見を出し、備えを進める力を持っています。こうした活動の結果を受け、「学童保育の防災は子どもたちとともに進めることが大切である」ことも支援員や県・市町へ訴えていきました。


佐賀県こども計画への意見提出
連絡会は、2024年7月から11月にかけて、2025年度以降実施の「佐賀県こども計画」へ学童保育防災向上の方針が明記されるよう、計画案への意見提出に集中的に取り組みました。
県から示された新計画案に対し、連絡会が「学童保育および関連機関の連携の明記」「防災に関する項目の新設」などを意見としてまとめ、提出したところ、これらは実際に計画内に採用されました。学童保育防災の取り組みを推進する根拠が公的文書に明記されたことにより、今後の実行支援が後押しされることになりました。
2025年度からの佐賀県こども計画はこちら
学童保育での防災から地域防災へ
本事業完了間際の2025年2月26日には、学童保育防災と地域防災を考えるシンポジウムを佐賀県小城市にて開催しました。参加者は県下の学童保育支援員、市議会議員、防災士資格を持つ市民など43人でした。
神戸大学の桜井愛子教授より学校現場の防災について、佐賀大学の五十嵐勉名誉教授より地域防災の取り組みについてそれぞれ紹介がされた後、連絡会から学童保育防災基礎調査の結果概要が報告されました。セーブ・ザ・チルドレン国内事業部プログラムマネージャーの瀬角からは、子どもワークショップの様子を紹介しながら「学童保育の防災は子どもとともに進めることができる」ことを報告しました。
学童保育の防災の動きは、地域防災を進める上でも要となりうるものです。シンポジウムでは、学童保育から学校、地域へのつながりを積極的に持つことで防災の備えが強まり、子どもたちを守ることができるという方向性も示されました。


2年半にわたった今回の事業を通じて、連絡会のスタッフからは「アンケート作成、提言の仕方、施策への反映を働きかける方法までを広く学んだ」との声がありました。
今後佐賀県内では、県こども計画に採り入れられた防災方針が具体的に実行され、各学童保育における防災の備えが実際に向上することが重要です。連絡会は今後も県下の学童保育現場を個別訪問するなどして、防災の取り組み推進をリードしていく予定です。
またセーブ・ザ・チルドレンは、今回の実績を踏まえ、他地域での学童保育防災向上を目指す取り組みも引き続き実施していきます。
(国内事業部 瀬角 南)