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マダガスカル
(公開日:2026.10.23)

【貧困撲滅のための国際デーによせて】シリーズブログVol.3〜マダガスカル・マナンジャリー県およびヌシヴァリカ県における「村の銀行」の取り組み〜

 
毎年10月17日は、国連が制定した貧困撲滅のための国際デーです。貧困の撲滅が人権の保護、人間の尊厳の確保、そして平和の実現と切り離せないものであることを確認する日です。
セーブ・ザ・チルドレンでは、「子どもの貧困」を重点分野の一つと位置付け、すべての子どもとその家族が、生活や成長に必要なものやサービス、機会を得ることができるように、直接支援や社会啓発、政策提言を通して、子どもの貧困問題解決に取り組んでいます。
そこで、10月17日の貧困撲滅のための国際デーに寄せて、セーブ・ザ・チルドレンが行っている3ヶ国での事例を紹介します。今回はシリーズ第三弾として、貧困問題解決に向けた取り組みの一環でマダガスカルのマナンジャリー県およびヌシヴァリカ県において実施している村の銀行としての役割を果たす「村貯蓄貸付組合(Village Saving and Loan Association:VSLA)」の取り組みについて紹介します。



ヌシヴァリカ県の村のVSLA会合の様子


「貧困撲滅のための国際デー」に関するこれまでのブログは、下記をご参照ください。
・【貧困撲滅のための国際デーに寄せて】シリーズブログVol.1〜タイ・バンコクにおける若者の就労支援〜
・【貧困撲滅のための国際デーに寄せて】シリーズブログVol.2〜モザンビーク共和国北部ナンプラ州における若者の起業支援〜


■ マダガスカルで貧困支援が必要な理由
マダガスカルでは、69.2%の世帯が貧困ライン以下で暮らしており、日本のような生活保護の仕組みも確立していないため、困難な状況に置かれた家庭を守るための支援が必要です。
セーブ・ザ・チルドレンでは、貧困下で暮らす家庭が、支援に頼らずに自立した生活を送ることができるように、生計手段の確立を支援しています。セーブ・ザ・チルドレンが支援するマナンジャリー県とヌシヴァリカ県では、大規模な企業や工場がないため、人口の多くが農業や漁業、小売店などを営みながら生計を立てています。こうした環境では、生計手段を確立するための第一歩として、事業資金を得ることが重要です。今回の特集では、その一助となる、住民同士でお金を積み立てて貸し借りを行う仕組みである「村貯蓄貸付組合(VSLA)」をご紹介します。


■ 村貯蓄貸付組合(VSLA)とは
村貯蓄貸付組合(VSLA)とは、金融機関の利用が難しい家庭に対して小規模な金融サービスを提供する仕組みです。15〜25人のメンバーで組合を設立し、週に1回会合を開いて、小さな金庫に少額ずつ積み立てを行います。組合員は必要なときに組合から資金を借り入れて、3ヶ月以内に利子を付けて返済します。複数の組合員が借り入れ、利子が組合に入ることにより、貸し付けのためのお金が少しずつ増えていきます。9ヶ月を1サイクルとして設定し、サイクル終了時には、積み立てた金額に応じて、それまでの貸し付けで得た利子が分配されます。つまり、積み立てたお金が少し増えて戻ってきます。

通常の金融機関よりも、少額から借り入れできるうえ、利子が少額であるため、借り入れのハードルが低いのが特徴です。

組合で積み立てるお金は、個人の積み立てだけでなく、組合の運営費や組合員の冠婚葬祭の時に充てられる相互扶助のための基金、組合の会合に遅刻などの禁止事項をした際に支払う罰金が含まれます。

組合の運営主体は組合員自身であり、組合長、書記、金庫番に加え、3人の鍵番が任命され、会合の日程や罰金・罰則の内容、貸付に関するルールや借り入れの可否も組合員の合意のもと決定します。





この小さな金庫が組合員にとっての銀行です
鍵番が3人揃わないと、開けられない仕組みです


■ VSLAが必要な理由
セーブ・ザ・チルドレンが支援するマダガスカル南東部のマナンジャリー県とヌシヴァリカ県では、人口の多くが、金融機関がない遠隔地に住んでおり、金融サービスを利用することが困難な状況にあります。

金融機関が身近にないことにより、収入を増やすための投資資金や教育費、医療費が必要な際に、高い利子を課す非公式な金融業者から借りなければならない状況があります。貧困下で暮らす家庭はこうした高額な利子により、さらに生活が困難になるという悪循環に陥っています。一方、金融機関があっても、融資を受けるためには担保が必要であるため、そもそも融資を受けることができない状況にあることもあります。こうした困難な状況に置かれた家庭にとって、VSLAは大きな助けになります。


■ VSLAの特徴
セーブ・ザ・チルドレンの役割は、VSLAの設立を支援し、組合運営の方法を指導することです。しかし、実際の運営を担うのは組合員自身です。組合のルールづくりや融資の判断、会合の運営なども、組合員が話し合いながら決めています。

【地域の信頼関係が支える仕組み】
お金を扱うため、「不正は起きないのだろうか」と心配されることがあります。しかし実際には、不正が発生するケースは非常に少ないです。
その理由の一つは、組合員同士が同じ地域に暮らす住民であり、日頃から顔の見える関係にあるためです。不正を行うと地域での信頼を失い、その後の生活や仕事にも影響する可能性があります。
一方で、VSLAを活用して事業を始めたり収入を増やしたりした組合員も多くいます。その成功事例が他の組合員の励みとなり、お互いに学び合いながら活動を続けています。

【読み書きが苦手な人も参加できる工夫】
VSLAに参加する人の中には、読み書きや計算が難しい人もいます。そのため、組合員同士で助け合うだけでなく、分かりやすい記録方法も取り入れています。
例えば、積立金を記録する通帳では数字の代わりにスタンプを使用します。スタンプ1個を1,000アリアリ(約30円)と決めることで、スタンプの数を見るだけで自分の積立額を確認できます。



個々の通帳にスタンプを押して積立金を記録する


■ 支援をより効果的にするためのVSLA
セーブ・ザ・チルドレンでは、VSLAをさまざまな支援と組み合わせて行うことで、支援の効果の持続性を高めています。

【栄養支援】
子どもの栄養不良を改善するための事業では、農家へのVSLA設立支援を行いました。事業では、栄養改善に向けた取り組みとして、農家に対して栄養価の高い作物を十分に育てるための技術指導を行いました。事業終了後も農家が必要な時に農機具を購入したり、最新の技術を学ぶための研修参加費を捻出したりするために、VSLAが役立っています。
 


農家のVSLA会合の様子


【青少年支援】
生計手段を持たない青少年への支援として、青少年のVSLA設立を支援しています。青少年が自立した生活を送れるよう、日常生活での困難を乗り越えるための「ライフスキル」の研修やビジネスプランの作成支援を行っています。また、作成したビジネスプランを実践するための起業資金として、VSLAを通じた資金の借り入れを促しています。VSLAは青少年にとって資金を得るための仕組みであるだけでなく、新たにビジネスを始める際に勇気を得る仲間の集まりでもあり、精神的な支えとしても機能しています。


 
青少年のVSLA会合


【教育支援】
マダガスカルでは公教育の授業料は無料ですが、学校に通うためには、制服や教材、文具を自費でそろえる必要があります。こうした費用は、貧困下で暮らす家庭には大きな負担となっています。今後、教育分野においても、VSLAを活用した家庭の経済的負担の軽減や子どもの就学継続への貢献が期待できます。


■ VSLA組合員の声
農家のAiméeさんは、2026年からVSLAの組合に加入しました。会合には子どもと一緒に参加しています。加入して2ヶ月後の会合にて、60,000アリアリ(約2,100円)を借り入れました。借りたお金を使って鶏を3羽購入し、鶏卵の販売を始める計画を立てています。
Aさんは栄養支援も受けており、鶏卵販売を選択した理由として、「子どもの栄養改善のために卵を子どもの食事にも活用できるためだ」と話します。また、鶏卵の販売で得たお金は、農器具の購入や、食材の購入や医療費にも充てることができます。


 
子どもとVSLA会合に参加するAiméeさん


【将来は金融機関の利用につながることも】
VSLAで借り入れや返済を経験することは、将来的に金融機関の利用につながる場合もあります。
VSLAで得た資金をもとに事業を始め、収入が増えることで、金融機関のある町まで移動する費用を負担できるようになったり、VSLAでの積立や返済の実績は、融資を受ける際に信頼を示す材料にもなったりします。

小さな金庫に積み立てられたわずかなお金は、農具の購入や子どもの教育費、新たな事業への挑戦へと姿を変えます。そして、その一つひとつの積み重ねが、家族の暮らしを支え、子どもたちの健やかな成長を支える力となっています。セーブ・ザ・チルドレンはこれからも、地域の人々が互いに支え合いながら、自らの力で未来を切り開いていけるよう支援を続けていきます。


村貯蓄貸付組合の取り組みは、日本NGO連携無償資金協力および株式会社ファーストリテイリング(ユニクロPEACE FOR ALLプロジェクト) からのご支援と個人・法人の多くの皆さまからのご寄付により実施しています。


*プライバシー保護のため名前は変更されています。

 

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