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〜子どものこころのケア、居場所づくり、経済的支援などの提言をまとめた報告書、能登地方の5市町、こども家庭庁に提出へ〜

(公開日:2025.04.24)
「能登半島地震・豪雨」 被災した子育て世帯の保護者約3,000人にアンケート:ストレスや運動不足…災害による子どもの生活へのマイナス影響が約9割
〜子どものこころのケア、居場所づくり、経済的支援などの提言をまとめた報告書、能登地方の5市町、こども家庭庁に提出へ〜

子ども支援専門の国際NGO、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:井田純一郎、本部:東京都千代田区、以下セーブ・ザ・チルドレン)は、2024年1月1日に発生した能登半島地震および9月の奥能登豪雨で被災した子育て世帯に対し、災害による子どもの生活やこころ、また家計などへの影響に関するアンケート調査を実施しました。
本日4月24日、「子どものこころのケア」「子どもの学び・育つ環境の整備(=子どもの権利保障)」「公的な経済支援の拡充」といった提言をまとめた調査報告書を、石川県教育委員会に提出しました。
今後は能登地方の5 市町(輪島市や珠洲市)や、こども家庭庁にも報告書を届け、緊急時の対応を求めていきます。

被災地の子どもたちの進級・進学などの準備に…返済不要の給付金4,051人に提供

セーブ・ザ・チルドレンでは、「能登半島地震・豪雨緊急復興支援事業」として、緊急物資の提供や子どもの遊び場の開設、学校などへの備品支援や給食補食支援といった活動を行っています。
その一環として、2024年11月から12月に、災害の影響により進級・進学や就職準備に支障が出ないよう、返済不要の給付金を提供する「能登子どもサポート給付金」を実施しました。
最終的に、発災時に石川県七尾市、穴水町、能登町、珠洲市、輪島市のいずれかに在住し、住宅が一部損壊以上の世帯の小学6年生から高校生世代の子ども4,051人への給付を行いました。

本調査は、「能登子どもサポート給付金」で給付が認定された世帯を対象に任意の形で実施し、保護者など2,876件の回答を得ました。
その結果、能登半島地震から1年近くが経ってからも、子どものこころのケアや遊び・学びの環境整備など対応が不十分であると考えている世帯が非常に多いことが分かりました。また、特に「一部損壊」や「準半壊」など、災害支援の公的制度の枠組みから除外されている世帯に対して、経済的支援が必要とされていることが明らかになりました。
今後は、国・自治体に対し支援制度の改善などを働きかけていくとともに、現地での活動を継続していきます。
【アンケート調査結果】 https://www.savechildren.or.jp/news/publications/download/notosupport_2024.pdf


■国と関連自治体への提言内容(主な3ポイント)
〇子どものこころのケアに対する中・長期的な対応として子どもや周りの大人への理解促進と体制整備

〇子どもの居場所・遊び場=学び・育つ環境の整備

〇家計がひっ迫している子育て世帯への経済支援の充実、今後の災害に備えた既存の公的支援制度の早急な見直し


<アンケート調査結果をふまえたまとめと、国・自治体への提言(詳細)>

1.子どものこころのケア
本調査では、災害による具体的な影響として「子どものストレス」と回答する割合が最も高かった。
国や自治体は、今後も継続して子どものこころのケアについてしっかりとフォローしていく必要がある。石川県はスクールカウンセラーの増員を進めているが、現在ある学校の枠組みを活かした体制の一層の充実を求めたい。
具体的には、子どもが災害によるストレス反応に適切に対処できるよう、学校教育の中にそのための時間を計画的に確保すること、被災した子どもが示す特有の反応やその対応*について、保護者や周囲の大人が理解を深める機会を設けることなどが挙げられる。こうした体制整備のために、教職員とメンタルヘルスの専門家が連携した協働体制の構築とそれを担う人材育成が不可欠である。
*「子どものための心理的応急処置(Psychological First Aid for Children)」(「子どものためのPFA」):自然災害や事故などの危機的な状況を経験した子どもを支援する際、特別な心理的知識がなくても誰でもが子どもに寄り添った支援ができるよう、取るべき行動や姿勢を示したものです。https://www.savechildren.or.jp/lp/pfa/


2.遊びや学びの環境
学校施設に避難所や仮設住宅が設置されることで子どもの居場所が縮小し、子どもたちが自由に過ごしたり運動したりする環境が制限されていること、それによる成長への悪影響を心配する保護者が少なくないことが明らかになった。

居場所は、知的、社会的、情緒的、身体的な成長・発達にも不可欠だと言われている。各自治体には、国の「こどもの居場所づくりに関する指針」に基づき、こうした子どもの居場所の早期の復旧と拡充を求めたい。

国や県には、自治体に対する人的・財政的支援をより一層講じるよう要請したい。
学びについては、具体的に必要な支援として「学校などの教育環境の整備」を求める回答が4割近くあり、道路が損壊しているため通学路が危険であり、通学時の子どもの安全を心配する声が多く寄せられた。子どもたちが安心して通学し学ぶことができるよう、通学路の早期の修繕、その他の学習環境の整備・確保が重要である。

3.被災した子育て世帯への経済的支援
子育て世帯の経済的状況については、赤字の世帯は被災前と比較して約4倍に増加しており、災害による家計への影響の大きさが浮き彫りとなった。

被災した子育て世帯への公的支援制度である被災児童生徒就学援助制度は、家屋の一部損壊を支援対象としていない。また、被災者生活再建支援制度においても、準半壊および一部損壊は支援対象外とされている。一方で、本給付金の認定世帯のうち半数以上が「一部損壊」に該当し、「準半壊」と合わせるとその割合は70%を超えていた。
このことから、公的支援が不十分であるという意見が半数以上にのぼっている。石川県では、令和7年度の当初予算において「学びの環境の再建」を盛り込んでいるが、子どもの育ちと学びを保障するためにも、一部損壊を含む子育て世帯に対する現金給付など経済的支援の充実が早急に求められる。国および県は、そのための予算を確保すべきである。
また、能登半島地震をはじめとする過去の大規模災害において寄せられた被災者の声を踏まえ、国は今後の大規模災害に備えた子ども支援の中長期的な対策として、既存の公的支援制度の要件緩和や給付金額の増額などについて、早急に検討を進める必要がある。

■調査結果のハイライト
〇能登半島地震・奥能登豪雨により、子どもの生活にマイナスの影響があったと回答した世帯は約87%。具体的な影響としては、 「子どものストレス(災害への怖さなども含)がたまっている」が最多回答(68.4%)
〇家計状況について、赤字の世帯が被災前と比較し、約4倍に増加(7.5%から32.2%)。そのうち、「赤字で、貯金をとりくずしている」は約5倍、 「赤字で、借金して生活」は2倍以上に増加
半数以上が被災した子どもや子育て世帯への公的制度や支援が足りていないと回答した。特に、「生活再建」や「子どもの学び」のための経済的な支援を求める声が多かった。
〇学校のグラウンドでの仮設住宅設置、体育館などの損壊により、子どもたちの居場所が減少し、運動や遊び、また学びや体験の機会が制限されることへの影響を心配する意見が多数見受けられた。また、通学路・学校施設など生活環境における安全確保を求める声も目立った。さらに、子どもたちの心理的影響に対するサポートを求める声も複数あった。
〇自宅の被災による経済的負担の悩みや被災者支援の公的制度の不足、復興の遅れに対する指摘が多く寄せられた。全体として生活再建が見通せず、地域の復興計画や将来に対する不安の声が非常に多かった。


<能登子どもサポート給付金概要>
【対象者】以下の要件1、2両方にあてはまる世帯の小学6年生または中学校、高校などに在学している子ども
1.2024年1月の能登半島地震もしくは9月の奥能登豪雨発生時に石川県七尾市、穴水町、能登町、珠洲市、輪島市のいずれかに在住(罹災証明住所が左記5市町内、セーブ・ザ・チルドレン活動地域)
2.2024年1月の能登半島地震もしくは9月の奥能登豪雨により災害時居住していた住宅が一部損壊・準半壊・半壊・中規模半壊・大規模半壊・全壊のいずれかに認定
※上記の市町以外に避難・引っ越しした世帯の子どもも対象になります。
【給付内容】子ども一人につき一律3万円(返還の必要なし)
【申請期間】2024年11月1日(金)正午〜12月16日(月)正午




プレスリリースのダウンロードはこちら
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 国内事業部
TEL:03-6859-0397 / E-mail: japan.pfa@savethechildren.org








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